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二つの世界の男のbeachboss114のレビュー・感想・評価

二つの世界の男(1953年製作の映画)
4.0
『第三の男』の勝ちパターンを踏襲しようとしているのは明らかで、廃墟の舞台設定や登場人物の佇まい、斜めの構図など随所に既視感あり(タイトルからして、明らかに二匹目を狙いに行ってるし)。

しかも、前作に比べると画面や人物設定に陰影が足りないせいで、全体的に軽くて生ぬるい。

終盤、潜伏先で「男」に自ら一方的にセリフで語らせる「過去」は取って付けた感が強すぎて、何ら心に響いてこない。そういう「事情」は周囲から浮き彫りにしていくべきであって、自分で語らせると信憑性も重みもなくなるし、単なる自意識過剰な悲劇のヒロイズムにしか感じられず、カリスマ性まで失せてしまう。そこが『第三の男』との決定的な差。

さらに戦争孤児の自転車少年や童顔の越境ブローカーなど、脇に「訳アリ」の魅力的なキャラを何人も配しているのに、甘いロマンスにフォーカスしすぎたせいで緊迫感が失せ、本来もっと盛り上がるはずのラストも物足りない印象に。

スパイ・サスペンスである以上、非情で無常なエンディングも納得なんだけど、メロドラマに舵を切ったからには、ラストでヒロインのリアクションをもう数カット挿入してくれないと、あまりにあっけなくて素っ気なく、見ている側は置いてけぼりを食った気分になる。

とはいえ、そこに行き着くまでの後半の脱出劇(越境)は、さすがに凝ったテクニックの数々で手に汗握らせる。このシークエンスだけでも見る価値あり。

余談だけど、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の子役の設定って、この映画の自転車小僧からパクってるのかも。
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