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ベイブのmaverickのレビュー・感想・評価

ベイブ(1995年製作の映画)
4.2
ずっと観たかった映画。
昔よく地上波で放送していて、ながら見したことはあるものの今回ようやく鑑賞できた。配信してくれたNetflixありがとう。


95年の映画だが、冒頭のロゴに古さを感じたくらい。面白くて食いつくように観てしまった。
一番驚いたのは、これどうやって撮影しているの?ということ。ベイブを始めとした動物たちの自然な演技にびっくり。調べてみたらCGと実写とのアニマトロニクスという技術を使っているらしい。今見てもCGと分からない高い技術と、実写のリアルさによって本作は成り立っている。本作はアカデミー視覚効果賞を受賞。作品の完成には実に7年を費やしたとのこと。こうした努力によって作り上げられた作品だということも好感が持てる。

豚が主人公?と、子豚好き以外にはそんな反応もされそうだが、このベイブがとにかくかわいい。子豚がペットとして人気であるのも本作で理解も出来る。ベイブが農園でたくましく成長してゆく姿を微笑ましく見守る、そんな優しい気持ちになれる作品だ。
ベイブの他にもアヒルのフェルディナンド、牧羊犬のフライとレックス、羊のメー、猫のダッチェスなどの農場の動物たちが愛らしく描かれている。まるでディズニーアニメの実写版のようだ。幕間に登場するネズミたちは声がチップとデールみたいで露骨だったけどね(笑)。

子豚のベイブは人間からすれば家畜。やがて食べられる運命を持って生まれた存在だ。ベイブを引き取った農園主のホゲット夫妻もそこには疑問を持っていない。クリスマスにアヒルが焼かれ、それを食卓で笑顔でほおばる一家の姿を「人間は残酷だ」と動物たちの視点で描いていたりする。こうして見ると何て残酷なんだと思いもするが、そもそも我々はこの農園主と全く同じ。自らの手で殺しさえしないが、スーパーで並べられた肉を毎日多くの人が食している。動物の視点で描くことで、罪もない動物たちの命を考えさせられる内容となっている。

かといって、それを批判するような内容とはちょっと違う。あくまでそれを普通に見せ、動物側と人間側とで視点が違うように見せているだけだ。農園主が改心するわけでもない。ベイブは皆に愛されるような存在で、牧羊犬としての才能も開花したから主人に気に入られたわけで。本作はそこから脱線はしない。子豚のベイブが、牧羊犬として農園でたくましく成長する物語。家畜を殺すことの是非を問う作品性とはまた違うのだ。


本作は公開時に大きな論争にも繋がった。この作品を観て、多くの人が考えさせられると思う。農園主を演じたジェームズ・クロムウェルは、本作を機にヴィーガンになったそうだ。そうした影響力を持った作品でもある。でもそれと、本作の作品性とはまた別かなと自分は思う。ベイブはベイブだ。豚という囚われた枠を抜け出し、彼は別の生き方を見つけた。そんなベイブが何とも愛らしくて素敵。すっかりこの作品の虜になってしまった。次作にも期待。
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