ひでG

晩春のひでGのレビュー・感想・評価

晩春(1949年製作の映画)
4.0
一番ショックだったセリフ。

終盤の最もよい場面に、父親笠智衆が
一人娘の原節子にしんみり言うセリフ

「お父さんももう56歳だ。これからどれだけ生きられるか分からん、、、」

うえ〜!俺より歳下じゃ!😭

もうこれから先どのくらいか分からん?って、😭

原節子が再婚した叔父さんに、
「不潔だわ!」て怒るところとか、
現代の恋愛観や結婚観、あるいは年齢に対する感じ方はこうも違っているのかと改めて思った。

僕は単に素人の映画好きなオヤジだから、分析は適当で自己流だけど、

小津安二郎と黒澤明って、いろんな面で対をなす作家だと思う。

黒澤が時代劇でもヒューマンドラマでも刑事ものでも、外国の古典原作でも何でも来い!というオーソリティなのに対して、
小津は頑なまでに定型にこだわってきた。

黒澤が社会的なテーマやむき出しの人間の欲望や本性をえぐり出したのに対して、
小津は静かに一点を見つめてきた。

僕は本作と初期の数本と「東京物語」しか観ていないけど、機会があれば、似たようなタイトルも観てみよう。
その中に作品個々の個性や共通点を見出せたらいいな。

小津作品のタイトルって、実にいい加減?
無記号とすら読めてくる。

ということで、
この作品は、父と娘。当時としては適齢期【死語ですね】を過ぎた原節子がお嫁に行くか否かというだけのドラマ、
でも、それが何とも味わい深く、見入っちゃうんだよ。

日本人の好きな言葉の響きや自然な繰り返し、
心が落ち着く構図。
役者さんもみんな実にいい!
かつてこんな奥行きのある言葉を発していたんだな、我が国の先輩たちは!って思う。

でも、静かなドラマの中にも、
ほんのわずかな香りだけど、
驚きだったり、ドラマ性だったり、
ほんのほんのわずかな漂いだけど、
怖い要素や危うさも感じさせたりと、

まるで白黒だけなのに、
濃淡だけで、山々や草木の質感を表す水彩画のような映画だと感じた。

原節子の父への思いの強さ、
戦争から当然何らかの影響を受けているだろうに、それらを語らせない、
今のドラマに集約させる作家としてのこだわり。

僕は今作を観て、夏目漱石に似てるんじゃないかな、と、ふと感じた。

漱石の人物は、およそ日々の生活の匂いというか、苦しみみたいなものとは離れたところに暮らしている場合がある。

この映画ももちろん笠智衆も働いているのだが、およそ終戦から何年も経っていないのに、生活感、生活苦という雰囲気は皆無である。

一点に集中するということは、他の点は削ぎ落とすということ。

この削ぎ落としこそ、今の映画や日本の大衆芸能・文化にも必要な観点かもしれない。

原節子めちゃくちゃいい!
感情むき出しの原節子もまたステキ!
ひでG

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