イホウジン

晩春のイホウジンのレビュー・感想・評価

晩春(1949年製作の映画)
4.0
複雑なストーリーに呼応する役者陣の演技が輝く。

ストーリーの構造がひたすら見事。登場人物それぞれのぶれない思いがまるで手に取るように分かる。話の因果が非常にハッキリしており、話の展開の仕方も役者のセリフだけでなく独特な表情でも仕掛けている点が素晴らしい。明確な答えがないという所はモヤモヤしてしまうが、その複雑さをも美しくしてしまうのが流石小津監督である。
小津の圧倒的なストーリーと映像美に呼応するかのような役者陣の演技も良い。特に原節子さんの心理描写の表現が印象的。前半で満面の笑みが輝く分、後半の無表情の凍てつきが深く衝撃を与える。セリフでは汲み取れない紀子の複雑な心境を様々な文脈で表現していた。

話の全体的な内容でお見合いを大前提としているのが個人的には少し残念だった点。自由恋愛に対する半ば嫌悪感のようなものも見受けられた。性別役割分業も小津監督の他作品より露骨だったようにも感じる。そういう意味では、部分的ではあるが古臭さを感じてしまうのは否めない。

戦争の影が他作より強いという点で、当時の時代背景も探ることが出来る。GHQ占領下の空気も色濃く反映されている。
イホウジン

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