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ベニスに死すのmajiziのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
4.0
美を追求する作曲家が出会ってしまった真実の美。
それが生身の人間で、少年という衝撃。

彼らは直接的に接触するわけではなく、ずっと主人公が美少年を眺めながら戸惑い、葛藤し、歓喜する様子をこちらが垣間見るという状態。

一見なんでも手にしている主人公の作曲家は老い先短く、少年が持つ若さへの憧憬が止められない。

もう二度と取り戻せない過去の時間(若さ)と、自分では創造出来ない美への限界を突きつけられた、ある種の暴力。

それに打ちのめされると同時に圧倒的、絶対的な美に邂逅できたという快感。

そんな気持ちを振り切り、コレラが蔓延するベニスから帰ろうとするも電車の都合でホテルに戻らざる得なくなってしまう。

しかしまた少年に会える(というか近くから眺めるだけ)ことであふれだす喜び。

顔がどうしてもにやけてしまうボガードさんの演技がほんと…ほんとに…笑


美少年タージオを演じたビョルンが監督ヴィスコンティをはじめ、当時周囲にいた大人たちに性的に搾取、消費された背景を考えるとなんとも言えませんが、悲しいかな名作にして問題作。

ラストシーンのビョルンの神々しさは、主人公でなくとも魅入ってしまいます。
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