ユーライ

ガメラ3 邪神<イリス>覚醒のユーライのレビュー・感想・評価

5.0
オールタイムベスト。怪獣映画のフォーマットを使って、1999年の世界滅亡を不可逆の切迫感で描き出している。『1』『2』がパブリックな作風だったのに対して、一気に膿を出すように趣味を入れまくった感覚がたまらない。曰く「プライベートフィルム」。一番作家の映画。その暴走の原因は、『GAMERA1999』で露悪的に詳らかにされた製作のゴタゴタかどうかは定かでないにしても、いまいち方向性が定まらない本編で明らかになっている。『タイタニック』を参考にし、これまでにはない個人のドラマを投入した結果、少年少女、怪獣、伝奇、エロス、終末論、電波、自衛隊、官僚、いじめ、百合等氾濫した要素をカタストロフでひっくるめたら色んなところがはみ出してしまっているが、むしろその破綻が独特の勢いに繋がっている。某国の死体、海底の墓場、オープニングから猛烈な死の腐臭。ヒーローの本質的なジレンマを暴き出して生み出された綾奈というキャラクターは、怪獣による破壊願望を体現する存在として発明。胎内での残酷な種明かしは、セカイ系への回答として機能。それから救ってあげるのがガメラ。対するイリスは言わば「悪い男」であり、山中での一体化はどう見ても変態の所業。両性具有である有機的な気持ち悪さ。未だに渋谷の地獄絵図を超えるシーンは国内海外問わず無い。被災した親子は初代ゴジラへのオマージュでしょう。「魂のルフラン」が聞こえてきそうなラスト、もうこういうサブカル的な同時代性を持った邪な怪獣映画は出てこないのかも知れない。それでもペシミズムに陥らずに希望を語る誠実さ。唯一無二の怪獣による黙示録。
ユーライ

ユーライ