タオリー

ジャズ・シンガーのタオリーのネタバレレビュー・内容・結末

ジャズ・シンガー(1927年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

世界初の長編トーキーという事で観てみた。
(厳密には違うらしいけど)

ブルーレイ特典の音声解説が大変勉強になった。
サイレントからトーキー移行期である1920年代後半の各映画会社の戦略、技術的な問題、世間の反応、社会の倫理観等々知らない事ばかりだった。

殆どがサイレントで、一部に音声が乗っかってるのに最初驚いた。
トーキーというともう全てに音声が入っていると思い込んでいたから。
いきなり全編に音声を入れたのではなく、徐々に作品内の音声部分を増やしていったらしい。
当時の観客が音声を初めて聞いた時はどんな気持ちだったんだろう。
今となっては想像ができない。

この映画でヒロインを務めたメイ・マカヴォイがトーキー移行期に引退したのは"喋り方"の問題があったという噂が広まったあたり、この時代ならではで面白い。(本当は結婚が理由)

でも実際にこの移行期に消えていった俳優はたくさんいたらしく、まさに『サンセット大通り』や『雨に唄えば』を彷彿とさせて感慨深い。

物語の後半で主人公が事も無げに顔を黒く塗りはじめたのにはギョっとした。
何を・・・やってるんだ・・・・。
唐突にどう受け止めて良いか判らず、以降ずっとモヤモヤが続くという。

今の価値観では到底考えられないけど、当時はこれが普通だったそうで。
白人が黒塗りで黒人を演じるミンストレル・ショーはその当時ですらもう主流ではなかったらしいけど、主人公のアル・ジョンソンは一昔前のこの芸当で人気を博したのだとか。
『ジャズ・シンガー』の主演を務めた頃にはもう大スターでギャラもすごかったらしい。
当時のアメリカでは有色人種に対する人種差別が合法だったから、彼一人が悪いというわけではないけど。
ただやはりこの芸当で当たった人だから、今となってはあまり語られないみたい。
闇深い。

ストーリー自体はそれほど面白くはないです。
どっちも成功するんかい、という。

でもこの時代の映画事情が知れて面白かった。
タオリー

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