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最後の切札の3104のレビュー・感想・評価

最後の切札(1960年製作の映画)
3.8
怪しげな新興宗教の裏を暴く正義の一面。
暴いてそこから金を巻き上げる悪の一面。
佐田啓二演じる主人公の両面性が魅力的なピカレスクロマン。

新興宗教相手以外にも色々とあくどい主人公だが、佐田の甘いマスクのせいか、下世話一辺倒ではなくどこかスマートささえ感じられる。話の展開の速さ(特に前半はかなりのハイペース。でもこれくらいのほうが勢いがあっていい)や、加えて途中で「攻守交替」というアクセントもあり、最後まで物語に引き込まれダレることなく観ることができる。

佐田の小悪党ぶりに加え、善人風だが実は仲間の宮口精二の存在も光る。そして何より画面を彩る「悪人顔脇役俳優」の皆様方。
加藤嘉、殿山泰司、浜村純、神山繁、佐藤慶、多々良純、そして妙に目立つ役柄の西村晃と小池朝雄。
93分と長くはない上映時間ながら、彼らのツラを拝むだけでもお腹いっぱいな気分。

しかし因果応報とはいえなんともいえぬ結末といい、主人公の似合うとも似合わぬともいわれぬ黒縁眼鏡姿といい、黒澤明の「悪い奴ほどよく眠る」が思い起こされる。両作とも脚本は橋本忍。
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