円柱野郎

劇場版 空の境界/第七章 殺人考察(後)の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

雨の落ちる街の裏通りと陰惨な連続殺人、このシリーズらしい湿っぽさが占拠する画面作りが上手い。
描き込まれた背景画や、CGを利用した空間の見せ方にも力が入っているけど、なによりアクションシーンなどの作画に妥協が感じられないのもすごいね。
オリジナルビデオではなく、あえて劇場でかけた作り手の気合いが観ている方にも伝わってくるようです。

ストーリーはこれまで惹かれ合いながらも一定の距離感があった二人、式と幹也の関係がメインに据えられてる。
魔術に殺人に陵辱に、結構残酷で異常な世界の話なのに、その世界にあって二人のなんとも純愛的な話には観ていてもまあそれなりに感じ入るところはあった。
そんな心情を表す場面では、式と幹也がお互いを心配して、お互いの家からお互いの家にいる相手に電話をしているシーンが気に入ってるかな。

シリーズとしては「空の境界」という話の黒幕が荒耶宗蓮だったこと思うと、これも六章と同じく外伝的後日談の様な印象を受ける。
ただ今作の敵である白純里緒が明確に荒耶の置きみやげであり、それによって第二章に絡めた「殺人考察」という式と識のアイデンティティーを語る話だと思えば、シリーズのまとめとしてはよくできた話なのは違いない。
連続殺人が誰によって起こされているのか、という前半の展開は「現場近くで目撃された着物の人物」というミスリードで一定のサスペンスが得られているし、式が白純と対峙してからは迫力ある殺陣の見せ場もあって、ずっと暗い話なのに観ている方としてはずっと引き込まれっぱなしでした。

橙子の語る「殺人」と「殺戮」の話なんてのはやっぱり衒学的な感じだけども、半分納得しつつ半分感心できず、まあそれはこの作風かw

そういえば白純を倒したところで警察は真相を知らんのだから、ずっと「着物の人物」を追っているだろうに。
でもその後、式と幹也の二人が平穏そうに見えるところを観ると、やはり橙子の台詞の「片づけ」とは警察関係のことだったのかな?
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