Ricola

離愁のRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

離愁(1973年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

こんな世の中じゃなきゃ、戦争なんてなければ…出会うことなんてなかった。
だからこそ、彼らの許されない恋はより儚さと切なさを帯びていく。
ジャン・ルイ・トランティニャンとロミー・シュナイダーという美男美女カップルの恋の行く方が、戦時下の列車で疎開中という過酷な環境において、美しく描かれる。


列車が先頭車両と接続すると、その勢いで他の車両、つまり前の方に乗っている妻子から引き離される。最後尾の貨物車両に押し込められたジュリアン(トランティニャン)は、見知らぬ人たちと長旅をともにする。
車両が離れてしまうというこの出来事が、彼らの運命を象徴するようである。

ロミー・シュナイダー演じる美しい女性にジュリアンはひと目で心を奪われる。初めて会ったとき、彼女の横顔がクロースショットでじっくり映し出される。それは見つめるジュリアンの視線がそのまま、彼女の顔の輪郭をなぞるようなカメラワークにあらわれているようだ。
これと似た演出は、戦後に二人が再会した際に反復される。

彼らのロマンスだけでなく、道中で老若男女問わず助け合う様子や「生活」をする様子も見どころである。
旅の道中で必死に歩いて逃げてきた人々を列車に乗せたり、赤十字からの物資を受け取ったり。
この「旅」のなかでも、日常らしい行動を工夫して行なう様子が描かれる。
列車が停まると皆近くの水道で水を汲んだり、頭や体を洗う。
さらには外でピクニックをしたりして、しばし気晴らしの時間を過ごすのだ。

その一方で、実際の映像が流れることで、彼らが戦時中の苦しい時を生きていることを改めて思い知らされる。
旅の道中でなんとか楽しみを見つけて民間人である彼らが笑っている様子から、ヒトラーを含めた政治家たちの笑っている実際の映像が映し出される。
このなんとも皮肉な演出が、その後の悲劇をより凄惨に感じさせる。

苦しい状況だけども、その苦楽をともにする相手とは愛情を急速に育みやすいというのはやはりそうなのだろう。
美しく儚い恋というのが、戦争という悲劇においてより増長されるのは致し方ない。
Ricola

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