Ricola

ジョー・ブラックをよろしくのRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

父を迎えに来た死神と恋に落ちる女。
死期を知った男はそれを周囲に知られないようにいつも通りに振る舞うしかなく、娘にその青年の正体を明かすことができない。一方で娘も死神とは知らず、それもビル(アンソニー・ホプキンス)を連れ去っていくとは知らずに夢中になる。

死神と人間の美しくも切ない恋模様が、父の娘を思う気持ちが自分自身の死の恐れを上回る。父の思いと純粋な娘の恋心が切なく交差する。


コーヒーショップで青年(ブラッド・ピット)と出会う。その運命的な出会いはとても爽やかで美しい。その後思いもよらない形で2人は「再会」するが、距離はすぐに縮まっていく。
プールでスーザン(クレア・フォーラニ)と死神がふたりきりになるシーンが2回ある。出会ったばかりのとき、お互いの存在を知る場面とお互いの気持ちを確かめる場面である。大きなプールなのでお互い離れたところから徐々に近づいていく。なんともロマンチックなラブシーンが、美男美女というのもあり、もはや神々しくまでも感じる。

とはいえ切なさやロマンチックな恋愛だけではなく、死神のキャラクターなどにユーモアが散りばめられている。死神が人間界で気に入ったものはピーナッツバター。1瓶をペロリとたいらげてしまう。さらには「金と死」だけは信用できるというドリューの言葉を利用し、皮肉めいた復讐をビルとともにおこなう。冷徹なようだが、人間らしさもある死神がさらにスーザンを惹きつけたのは言うまでもない。

父と死神が消えていった丘から、「彼」だけが戻って来る。父の死は途中から覚悟していたけれど、スーザンが深く愛した相手までもいなくなってしまったことを知る。なぜなら死神が抜けた青年は、じっと目を動かさない死神と違い、目をキョロキョロと動かすから。スーザンの表情の変化から、彼女の愛した彼がもういなくなってしまったことと、一目惚れした彼が戻ってきたことへの複雑な感情の絡み合いが、じっくり映し出される。そのシーンで、スーザンの失恋の悲しみと父の死を受け止め、また前を向こうとするところまで、彼女の複雑な心の動きが表情だけで語られるのが素晴らしい。

長尺ではあるが、父、娘、死神それぞれの思いが丁寧に描かれているため、ダラダラと長い印象は受けなかった。ブラッド・ピットとクレア・フォーラニの美しさとロマンチックだが切ないストーリーに胸がきゅっとなった。
Ricola

Ricola