こたつむり

離愁のこたつむりのレビュー・感想・評価

離愁(1973年製作の映画)
2.4
『第二次世界大戦中のフランス―。
離れ離れになった夫婦を軸に描いた純愛の物語』
という事前情報だけを伺って鑑賞しました。

物語の序盤から。
戦車による砲撃。戦闘機から落とされる爆弾。実写を交えて苛烈な欧州戦線を想起させる描写。そして、フランスの片隅に伝わるドイツ軍進撃の報。うーん。なかなか骨太な雰囲気が漂っております。

そして、主人公たちは。
疎開を決断し、汽車に乗り込むのですが、奥さんは妊婦なので一等客車。主人公は健康な男性なので貨物車両と、離れ離れになってしまうのです。そんな中、不安そうに妻を見つめる主人公の優しい視線。あは。いいよ、いいよ。これは純愛っぽいよ。この後、離れ離れになった二人に苦難が待ち受けるのですな。

…なんて思ったのも束の間。
主人公は貨物車両で麗しき女性に出遭い、奥さんに渡すはずの水(と自分が食べるサンドイッチ)を彼女に差出して色目を使い出すのです。そして、気付けば、皆が寝静まる貨物車両の片隅で。雄しべと雌しべがごっつんこ。

そう。本作は夫婦の純愛ではなく。
不倫の純愛(というのが言葉として正しいのかどうかは別にして)を描いた作品だったのですね。

しかも。これが日本の物語ならば。
卑怯と言われようとも、主人公側に“言い訳”があったと思うのです。「お、俺からは手を出していないんだよ。向こうからね、誘ってきたの。う、うん。だから、俺は悪くないんだよ」みたいな“言い訳”が。

しかしながら、本作の舞台はおフランス。
そう。誰も彼もが“ラブ突然”の国。
だから、言い訳なんて存在しないのです。浮気を悪いなんて思わないのです。これは、やはりお国柄の違い…とか書くと偏見なのでしょうかね。でも、そういう話ばかり耳にするので…。まあ、批判は甘んじて受けます。

そんなわけで。
不倫の映画ならば手を伸ばしていなかった…と思いますのでね。自分の判断の甘さに肩が下がる思いでした。だから、この系統の作品を許容できる向きにお薦めいたします。また、夫婦での鑑賞は積極的にはお薦めしません。
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