チョマサ

モンスターのチョマサのネタバレレビュー・内容・結末

モンスター(2003年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

この映画の怖いところは、自分の信じてた未来はもう来ないし、更にこの環境からはもう抜け出せないという誰だって抱く絶望を、アイリーンの生涯で描いてることだと思います。彼女のような生まれてすぐハードモードな人生で小さいころから娼婦としてしか生きる道がなかった人を、小さいころから夢を今でも信じつづけて、そのまま大人になってしまった人間として描いてるのがさらに残酷にしています。

セルビーが世間知らずなのも最悪の道に進むしかないのに拍車をかけてるし、クライマックスでセルビーが取った行動もセルビーがまだ若くてやりなおしが出来るのを考えると厳しい展開を迎えます。アイリーンの気持を考えるとかなり泣かせるんですが、絶望的なことが多すぎて何も感じなくなる映画でした。

自分も人生を失敗してるので、この先の未来はすでに決まってるしこれを変えるのは大変なのが分かるから、見ていて鬱になるというか頭に痛みが残る映画でした。

この映画の真骨頂はキャストの演技と役作りですね。シャーリーズ・セロンの贅肉のついた体や顔が彼女の不遇さを強調して説得力を出してます。クリスティーナ・リッチも頑張っていて二の腕の肉のつき方がリアルです。ブルース・ダーンのアイリーンを最後まで心配する爺さんの役も泣かせます。

連続殺人犯アイリーン・ウォーノスの伝記映画で『テルマ&ルイーズ』のモデルになった人らしいです。
主演はシャーリーズ・セロン。監督はパティ・ジェンキンスで、2017年に『ワンダーウーマン』を監督した人。監督は下のインタビューでこう語っていました。

AUGUST 21, 2017

『ワンダーウーマン』のパティ・ジェンキンス監督に聞いた!スーパーヒーローの魅力と本当の勝利とは?
https://www.vogue.co.jp/celebrity/conversations/2017-08-21-01/page/6
——あなたの前回の映画『モンスター』は、非常に不幸な女性の物語ですが、今回の『ワンダーウーマン』と少しだけ似ているとしたら、男性がつくった状況や世界に対して、女性がどのような行動をとるかというようにも見受けられました。

両作品とも、普遍的なテーマを扱っていると思います。両方とも女性が主人公で、両方とも厳しい世の中で生き抜くためには、どのような存在になりたいかということだと思います。『モンスター』では、困難な状況の中で生きる女性が、心の中では善であろうとしても、現実にどう立ち向かうかで悪人になってしまうという物語です。今回の作品は、真逆でさらに先を行っているのですが、世の中に隠された悪に遭遇したとき、善のほうに向かおうとする物語です。自分が置かれた状況に対して、(『モンスター』のように)悪に向かっていくか、それとも(『ワンダーウーマン』のように)善に向かうか。そういう視点で見た場合、この2作品は真逆なのかもしれませんが、その決断をするのは結局、自分自身なのです。
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