シンタロー

穴のシンタローのレビュー・感想・評価

(1957年製作の映画)
3.7
市川崑監督×京マチ子主演のサスペンスコメディ。出版社に勤める北長子は、警官の汚職事件の記事を書き、それが原因でクビになる。ヤケになって遺書を書いていると、友人の赤羽が訪ねてきて、あるアイデアを思いつく。長子自ら失踪騒動を起こし、その期間のルポタージュを書いて、懸賞金を募集するという自作自演の企画だった。長子は週刊誌と契約し、第億銀行の白州に資金を借りに行くが、白州には良からぬある計画があって…。
久々に見直しましたが、市川崑のセンスの高さと、京マチ子のコミカルな七変化が何とも愉しかった。台詞やカットのテンポが良く、スピード感あふれる演出が見事。二転三転する騙し合いがスリリングなんだけど、登場人物が皆どこかお馬鹿で、すっとぼけた感じも笑えて、コメディとミステリーのバランスが絶妙。"穴"に嵌っていく主人公が、"穴"を手がかりに謎を解き、最後も"穴"で終わるという構成。夫人と共作のシナリオも、逆転の連続で巧く出来ていると思いました。
なんと言っても主演の京マチ子が素晴らしかった!個人的には周りが言う程の美人女優だとは…ガタイがいいし、どちらかといえばファニーフェイスで、大映なら山本富士子の方がよっぽど美しいと思うのですが、お芝居は本当に見事で、国際的に評価されるのも納得です。妖艶でグラマラスなイメージが強いですが、いい意味で裏切りのコメディエンヌぶり。しゃべくりのテンポ、顔芸の数々、キャットファイトで魅せるアクション、とにかく大活躍です。逃亡中の変装も見どころで、パン助風ダイナマイトボディコン、つけボクロが可笑しいダサ田舎娘等々、見てるだけで楽しかったです。髭が滑稽でおバカ過ぎる菅原謙二と、ハンサムなのに笑顔が不気味な船越英二。大映を代表する二枚目達も、コメディに徹して楽しい。胡散臭い山村聰の芝居は良かったですが、意味不明な登場の石原慎太郎には驚きでした。
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