1978年の山口小夜子といえば資生堂シリーズで最も有名なポスターとなった頃。ということは最も「山口小夜子らしい」スタイルを確立した頃。寺山修司『上海異人娼館 チャイナ・ドール』ならさもありなん、ATGの社会派作品出演に違和感を覚えた。そのはずが、あれよあれよという間に原田芳雄とねんごろになる彼女の華奢なからだは少女然としていて、裸のまま膝を抱いて蹲る姿は絵画のよう。人工的な美に妖しさが増し、モデルとしての彼女とも違う魅力がある。福島の浜辺をハイヒールですらりすらりと歩く山口小夜子と野犬のような原田芳雄とのコントラスト。
ところで我々は、この映画で恐れられていたことをそのまま突きつけられた。そしてその構造に至るまで、現実に続いている。
海辺の向こうに見える原発はいつも同じ角度からしか映されない。福島第1原発入口付近のゲリラ撮影シーンでその理由を我々は知る。チャイナ・アクシデント？シンドロームじゃないの？と思ったら『チャイナ・シンドローム』よりこの作品のほうが先だった。
鈴木清順『ピストルオペラ』にも山口小夜子は出演している(この役がまた素晴らしい)が、清順監督はなぜ大正三部作あたりでも起用しなかったのだろう。観てみたかった。
