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息子のTSのレビュー・感想・評価

息子(1991年製作の映画)
3.6
【息子が一人前になる時】77点
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監督:山田洋次
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:121分
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1992年日本アカデミー賞最優秀賞作品
『晩春』の男バージョンのような映画でした。山田洋次監督はこういう作風を作るのが本当に上手。敢えて章分けにしているのもわかりやすかったですし、父昭男の苦労と切なさも十二分に感じ取れました。

昭男の次男である哲夫は上京してから仕事を転々としていて、昭男は気がかりでいた。ある日、居酒屋を辞めて働きがいがある鉄工所に勤めるのだが。。

昭和から平成に移り変わる日本の良き部分を少し描いている温かい作品と感じました。主役と言える三國連太郎の名演は勿論、脇役としては特にいかりや長介が演じる鉄工所の「おっさん」や田中邦衛が演じるタキさんは良い味を出していました。前者は最初のビールの一口を楽しむために働いていて、給料が手に入れば仲間と居酒屋にいき楽しむ。後者はひたすら鉄材を運輸するドライバーなのですが、車でサーフィンに行こうとしている連中に難癖をつけてしまいます。それぞれ人間味のある行動でして、微笑ましくなってしまいました。

一方、安定した職につけない哲夫は、ついに鉄工所の配送先でとある女性に出会います。やはり男女の出会いは人生を変える。一人前になるには結婚しなければならない。というやや古い概念も、些か間違いではないのではとも思えました。ところが彼女にはある事情がありました。やや差別的な発言も見受けられますが、時代的に仕方ない部分があるでしょう。しかし、このような事情においても哲夫の想いは変わりません。それを心配そうにみる昭男。今作はシンプルなタイトルが示す通り、ダメダメであった息子が一人前の人間として育っていく様を温かく描いているのです。

平成が始まり、バブルが崩壊して先が不安だらけだった日本。その日本にも希望は満ち溢れているのだということを如実に伝えているとさえも思いました。
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