みちろう

処女の泉のみちろうのレビュー・感想・評価

処女の泉(1960年製作の映画)
4.5
やっとイングマールベルイマンの良さを素で感じた気がする。これはなかなかエグい映画。

裕福な家庭で育った少女が教会へ向かう道中に貧しい3人組の牧夫に殺されてしまいそれを知った両親が復讐に駆られるというストーリー。

神を信仰する日常、貧しきものに手を差し伸べ真面目に生きる夫婦、純白な容姿と中身を持つ一人娘の美しさ。のどかで幸せムード溢れる前半から一転、そこで積み上げられたものが一気に壊され暗く悲しくひたすら気分が沈む後半。

一連の流れの中で手に取られるように感情を揺さぶられ最後まで緊張が抜けない内容は復讐劇としても十分すぎるクオリティだけど、神の不在/沈黙が一つのテーマってことを念頭に観るとこれだけ神を崇めてるのに不幸は起こり続けるという現実世界の不条理が浮き上がってくるのが面白い。

最終的に自分の思うままに復讐を遂げる父親の頭には神の存在など無いし最後に神を感じさせる超常現象的なことが起こり都合よく信仰する人々など、神を信じる人々をリアルに客観視する作りになってる。他にも懺悔、嫉妬、欲、など純粋に人間の抱える暗い/悪い部分がよく描かれている。

何も知らずに優しく振る舞う少女がレイプされ絶望の淵で殺されるシーン、両親が少女の死を知った時と亡骸を抱き抱えて感情を爆発させるシーンは結構見ててキツい。でも前半の衣装のくだりや教会へ向かう旅路の場面はとても綺麗で見惚れる。画面にポツンと映る一本の木を激しく揺する父の姿。あのシーンは特に絵的にもメッセージ的にも映画を象徴するものだと思う。

ホント印象に残って強く訴えかけてくるシーンが多くて改めてベルイマンの表現力や映像美の凄まじさを痛感(今作から加わったカメラマン?も貢献してるのかも?)。

90分以内なのにダンサーインザダークとかより感情を持ってかれるこのクオリティ。現代の映画は技術が高まり表現力が増えた分ガヤガヤしてる所もあるなって思った。このシンプル具合が自分にはドンピシャ。この作品をきっかけにもっとベルイマン作品に興味が湧いた。

どことなく羅生門(1950)?/ カエルサンドイッチ/オーディン教/懺悔/白馬/妊婦/少年/ロウソク/ミサ/少年/タイパ良すぎるベルイマン映画/シンプル明快でベルイマン紹介するならこれを勧めるかも
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