みちろう

炎628のみちろうのレビュー・感想・評価

炎628(1985年製作の映画)
4.1
モスフィルム無料公開

ゲリラ部隊の銃を掘り当てた少年が地獄のような戦争の惨状に飲まれていく

臨場感ある激しい戦闘の中でドラマが繰り広げられがちの一般的な戦争映画と違って、虐殺が主に描かれるこの映画はすごく暗くて戦争の狂気を強調した雰囲気が特徴的。

最初は戦地へ向かう兵士に憧れを抱いてた少年だったけど彼らに見捨てられ、行く先々で出会う家族、同士、好きになった女の子がみんな悲惨な結末を迎えることになり何一つ報われずドン底に突き落とされ最終的には抑えきれない憎悪を抱えることになる。

戦争映画はここまで暗くて後味悪くて落ち込ませるように作った方がより忠実でその悲惨さが伝わるなと改めて思った。プライベートライアンのようなアクション映画に近いやつもそのジャンルなりの良さはあるけど、ウクライナやガザの情勢などを見てると戦争ってやっぱりそんな風にかっこいいものには思えないしいつ見ても悲しくしせられる。

比喩表現を含んだようなシーンが多くて単純に作品としてみても詩的で深みがあり、ある程度テンプレ化されたハリウッドの戦争映画とはここもまた違う。

2つのヒトラーを恨むシーンが一番印象に残る。ヒトラーに見立てたカカシに避難民が唾を吐く所と終盤に全てを失った少年がこいつさえいなければとヒトラーの写真に銃弾を撃ちまくる所。戦う兵士よりも戦争の影響を受けた市民にフォーカスした本作では象徴的に感じた。

ここまで言っといて正直な感想は作風はすごく良かったけど古い作品だからか映像のインパクトはやや薄くて感情移入しきれなかった。独ソ戦争やソ連のゲリラ部隊についても調べておくべきだったと思う部分もあってより知識を深めてからまた観てみようと思う。

こういう反戦映画がいくつも作られてるのに戦争が繰り返される虚しさ。今見ても内容に古臭さを感じないのが悲しい。


沼地/ライフル/虹/かかし/難聴/牛/戦闘機/鳥/628人/ヒトラー/炎/モーツァルト/ 少年の本当に戦争を体験したように変化する表情がすごすぎる
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