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ビューティフル・マインドのshinのレビュー・感想・評価

ビューティフル・マインド(2001年製作の映画)
3.9
ナッシュ均衡を定義し、ゲーム理論と現代経済学に大きな影響を与えた天才数学者ジョン・ナッシュの物語。

ゲーム理論の入門書を読んだ際に、ナッシュに興味をもったことがきっかけで鑑賞。

まず鑑賞前に、主役の天才数学者を演じたのがラッセル・クロウだということに驚いた。グラディエーターでマッチョな剣闘士を演じてアカデミー賞を取ったり、すぐ喧嘩しちゃう乱暴者(これをテーマにしたサウスパークのエピソードがあったと思う。)だと思っていたからだ。

彼の演技はそんな事前イメージとは全く異なり、病に精神と人格を侵食される孤独な天才を繊細に表現している。彼は人の目をまっすぐに見ることができず、常に何かを恐れていおり、見ているこちらをはらはら不安にさせる。

映画の中盤、我々は彼の狂気に気がついた瞬間、我々も彼と同様、自分たちが今見ているものが現実か妄想か見分けがつかなくなる、ナッシュと同じ精神状態に追い込まれ、不安と混乱を感じる。
ここから、目の前のスクリーンに映される映像を否応なしに見せつけられ、出来事の進行を作り手に完全に握られる映画という芸術の特性が、我々を映画内の登場人物たちと同じ感覚を共有させるものだということに気がついた。

終盤にかけて、自らの才能と人格を理解し、慈しんでくれる同僚と、妻との繋がりが、彼の精神を解きほぐし、ラストシーンのノーベル賞授賞式に向かわせる。
ここで感じる安心感とすっきりした気持ちは、おそらくナッシュが感じていたものと同じものだろう。

ラッセル・クロウの名演と、見事な脚本で見るものの心を揺さぶる名作だと思う。
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