shin

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイのshinのレビュー・感想・評価

3.8
CIAはメキシコ麻薬カルテルを撲滅するため、カルテル同士の戦争を引き起こそうと企む。

前作のアメリカvsカルテルという構図はなくなり、アメリカがカルテル同士の戦争を煽るために工作を行い、アメリカに背いたアレハンドロはカルテルとアメリカに追われる…というかなり複雑な構図になっている。

アレハンドロたちはカルテルの攻撃を偽装して、その敵方のボスを急襲し、皆殺しにしたうえで娘を拉致する。
ここだけ読むと完全にアレハンドロとその作戦を指揮するアメリカは非合法かつ、非倫理的な活動をしている。敵のボスを殺す時もカルテルの残虐な手口を模倣するために、死体に対して弾倉が空になるまで、弾を叩き込む。
そこに正義はあるのだろうか。相手は決して無辜の市民ではなく、麻薬を売り捌いて、テロリストを供給するカルテルだ。しかし、だからといってその家族に手をかけたり、問答無用の残酷な殺し方をするのは正しいのか。
良いモノ、悪モノという境界が壊れた、深淵を覗く化物同士の殺し合い。そういう、我々の感覚と完全に離れた意識で、国家は意思決定し、活動しているということに恐ろしさを感じた。

前作と比べると派手な作戦シーンや銃撃戦は少なく、ジリジリとした逃走劇が続く。アクションというよりは深刻なスリラー要素が強まって、少しだけ見にくかったかなと思う。

ボスを殺すシーンの拳銃の引き金を、銃を握っている手と反対の人差し指で弾いて、連続して発射する撃ち方は初めて見た。
あれはかなり印象的。作戦とアレハンドロの暴力性を表すブルータルな絵作りに貢献していた。
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