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日本のいちばん長い日のshinのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
4.0
庵野秀明監督が大ファンでエヴァやシン・ゴジラにも影響を与えた、岡本喜八監督によるオールスター映画。

ずっと見たいと思っていた作品で、アマプラに追加されたのをきっかけに視聴。

まず、タイトルが出るまでのプロローグの長さに驚かされる。ポツダム宣言の受諾に関わるドラマが約20分ほど続き、その議論が落ち着いたと思ったところで、本作の中心エピソードの幕が開ける。ストーリーの進行にメリハリがついて映画が見やすくなるし、何よりすごくカッコいい編集だと思った。

映画の前半部は終戦に向けた手続きを進める政治家と官僚たちの活躍を描き、後半部は玉音放送の録音を巡る宮城事件を描くという構成に大きく分けられている。

前半部の官僚たちが議論を行い、手続きを進めていく様子は、なるほどシン・ゴジラと似ている。想像していた敗戦末期の混乱感はさほどなく、それぞれが自分たちの職務を全うしていく姿が描かれている。
この作品において官僚たちは終戦に向けたギリギリの調整を行い、軍人に脅されてもなお自らの職務を遂行する、頼もしい存在として描かれている。一方で、黒澤明監督の「生きる」では役所は全くの無能の体系として描いている点で対照的だ。

これは恐らく、「日本のいちばん長い日」がヒューマンドラマというより、淡々と進むドキュメンタリー的な映画であることに原因があると思う。
阿南陸相にも迫水書記官長にも全員に家族や生活があるわけだけれどもそこはこの映画ではほとんど描写されない。ここはシン・ゴジラでも同じだ。
これによってシナリオの進行はシャープになり、結果として官僚たちの努力が成果を結ぶような形で捉えられる。

後半部は、陸軍の将校たちの暴発を描くが、ここは役者の演技、特に顔面力が凄かった…。クーデター派の中心である畑中中佐は目がかっぴらき、爛々として、近衛連隊と東部方面軍にクーデターへの参加を促す。彼が絶叫しながら軍人の理想を説く様は殆ど何を言っているかもわからず、内容も受け入れ難い。これを狂気というべきか、国を思う純粋さというべきか、ただただ圧倒されてしまった。また、横浜の部隊を率いて重臣の殺害を企む佐々木大尉も、完全に狂人としか思えない演技で、軍の反動分子の到底受け入れられない狂気を感じさせた。

白黒で2時間を超える大作だが、淡々と展開されていくストーリーと超豪華な役者の演技で全く飽きることなく見ることができた。
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