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傷だらけの挽歌のあのネタバレレビュー・内容・結末

傷だらけの挽歌(1971年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

「キラーカーン」でぶっ壊れてたスコット・ウィルソンと、「ある戦慄」で大暴れしてたトニー・ムサンテが共演しているとのことで、鑑賞。相変わらずスコット・ウィルソンのイカれぶりは凄まじく、トニー・ムサンテには危ない色気が漂っていました。マイナーながらも好きな役者が増えて嬉しい限りです。また、ママも令嬢はぶん殴るわ、マシンガンぶちかますわ、なかなかの暴れっぷりが素晴らしかったです。

というわけで、メジャーな顔ぶれではないものの、役者さんが見事に粒揃いの今作。これに作品自体も面白いときて、最高でした。序盤10分くらいまでに4人殺す素早さといい、ラストの銃撃からバイクを多用した逃走撃までの華やかさといい、アクションの素晴らしさもさることながら、絶対的な破滅を感じさせる三角関係も素晴らしかったです。追手から逃れるには、人質を殺すしかない。しかしそれはスリムが許さない。ならばスリムごと殺すべきだが、最強のママであっても息子を殺す決断は下せない。そして早く家に帰りたい人質の令嬢は、狭い部屋に閉じ込められることとなる。これにより停滞した時間の中で、徐々に計画にヒビが入っていく緊張感の凄まじさ。それを、建物の1階と2階を上手く使ったローアングルとハイアングルで加速させる妙。そして、なんと気高い令嬢がスリムの異常なまでに一途な愛を受け止めてしまい、これで気品を第一とする父の元には帰れなくなるところで、破滅が決定的になる。この展開の付け方が本当に素晴らしいです。さらに、その後戻りのできなさを、スリムの用意した二人だけの空間と、雑に脱ぎ捨てられた下着を令嬢の父親へ突きつけることで見せるアイデアも光っていました。ラスト、母親の呪縛から開放されたスリムは本当の男になり、父親の呪縛から開放された令嬢は本当の女になった、その瞬間に間髪入れず破滅をもって物語に終止符を打つ厳しさもよかったです。ロバート・アルドリッチ監督作をもうちょっと漁ってみたくなる、そんな映画でした。
あ