江戸word

グラン・トリノの江戸wordのネタバレレビュー・内容・結末

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

昔親が観ていたのを横目で観ていて、なんとなくあらすじは把握していたけれどちゃんと観たのは今回が初めて。

主人公は言葉遣いと気性が荒く、差別主義者なのかな?なんて思って観ていたけれど、実際はそうではなく、悪態はつくけれど、その人その人の本質を見て付き合うかどうかを判断する至極正直で柔軟な人だと感じた。隣人たちと交流を深めるシーンは可愛らしさもあった(食事をすっかり気にいっているところなど)。

朝鮮戦争で13人以上人を殺めていて、それが上の指示ではなく自分の判断だったからこそ後悔の念を拭いきれなかった主人公。隣人を思って今回も自分の判断でチンピラを退治しようとしたことが裏目に出て、隣人を傷つけてしまった。その悔しさがわかる、部屋の中を殴り続けるシーンは本当に苦しかった。

最後、一人でチンピラを殺しにいくのか、と思いきや、胸ポケットから取り出したのはライターで、自分は丸腰。隣人が安らかな日々を得るためには、自分を犠牲に刑務所に入れるしかない、と判断して、自分の最期の日になることを受け入れ、床屋や仕立て屋に行って準備を整えていたのか…ということが一気にわかる終盤のシーンでも胸が苦しくなった。

隣人の少年との交流には最後まで胸を打たれる。ぼんやりしていた少年が自己主張する強さを身に付けていく様子は気持ちよかったし、ラスト、主人公のグラン・トリノに乗って海沿いを走る姿もとても良かった。

賢い相棒のラブラドールレトリバーや、主人公が行動に出る時に流れるスネアドラムのシンプルな音楽など、細かいところも好きだった。

バッドエンドといえばバッドエンドだけれど、救いがある終わり方なのがとても良い。主人公を苦しめていた軍人時代の記憶。国家単位の争いなのに、個人対個人の殺し合いを強要する戦争というシステムがなくなってほしいと強く願ってしまう映画だった。
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