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グラン・トリノのarchのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.2
画面からはウォルトの周りに対する強い嫌悪感、偏見。また周りからのウォルトへの仕打ちが観てる側をイラつかせる。そこからタオと出会い、身内よりも近く感じる人達と出会って行き、彼は人生最後に変わっていく。タオはひどくアメリカ的ではあるけど、男らしさっていうのを知っていく

好きなのはやっぱりウォルトが交流の中で表情が優しくなっていく所。ウォルトが歯に衣着せぬ人間だからこそ、モン族や神父との交流が差別や偏見を越えた本物であることを実感させてくれる。

あとアメリカにある差別が描かれてる訳だけどモン族の文化、モン族が何故アメリカに居るのか、それをテーマにしている映画は初めてで他とは違う映画だと思った。

最後のシーン、死を選ぶっていう点や家族や身内がひどい奴らという点で「ミリオンダラーベイビー」を思い浮かべてしまった。

観るまで分からなかった「グラントリノ」って題名。人生最後の友人へのプレゼントの名前だったんだなって。


※2022年2月8日
クリント・イーストウッド作品に通ずる老いに纏わる三つのテーマ。世代交代というテーマ、死に様というテーマ、過去の清算というテーマ。全てにおいて集大成的な作品である。
そして何より『アウトロー』『ペイルライダー』から続く"打たざる銃"演出などにも通ずる"見えない幽霊的な主題"や憑依という主題における最終到達点としてラストも完璧。

これが遺作と言われてもなんも思い起こすことがないような作品であり、しかし同時に「映画を死ぬまで作り続けるのがクリント・イーストウッド」を思い知らされ、決して観客の思惑通りに収まらないのがクリント・イーストウッドなのだ。

擬似家族ものとしても『サンダーボルト』から続く車という連想を絡めて極めて彼らしい作品。

過去作と絡めるといくらだって語れるが、何よりこの作品は『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』を超えたからこその主人公のバックボーンを連想させる。それはつまり映画を通してクリント・イーストウッドが形作られ、一体化していくような感覚でもある。ここまで来たらもクリント・イーストウッド映画をどう評すればいいのか分からない。なぜなら彼の作品はクリント・イーストウッドそのものであり、険しい表情とキツイ目付きで、奥に潜む愛情をこちらを睨みつけてくるような凄みがあるからだ。
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