むさじー

グラン・トリノのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

<移民家族との交流から偏屈老人が選んだ最期>

この偏屈老人の口からは差別用語が飛び交い、目には目をというアメリカ式男らしさを主張する。
しかし、「人殺しは最悪」と戦場で認識したウォルトにとって、それまでの(西部劇以来伝統の)アメリカ式身の処し方、報復の連鎖は負のスパイラルしか生まないことが分かっていた。
しかも、今回の事件は自らの軽率な行動が元になっている。
そこでウォルトは、復讐の連鎖から姉弟を守るため、スーへの償いのために、不良グループをこらしめようと、命を投げ出す覚悟をする。
と、このラストシーンが感動を呼んでいるようなのだが、果たしてベストな選択であったのか、疑問に思える。
家が破壊され、女性が暴行され、となれば法的に追い詰め処罰する手段は十分あるはずなのに、余命短い男が“死ぬ意味を求めて”となると、やはり西部劇に近い英雄像の描き方かな、という気がする。
気骨ある老人の生き方(死に方)は、どこか日本の「武士道」「葉隠」の精神に近いものも感じるが、法治国家における暴力への対処としては、素直に感動できないものが残ってしまう。
でも、国粋主義の孤独な老人と異邦人家族の交流には温かいものを感じた。
むさじー

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