約20年ぶりの再鑑賞だったが、映像は全く色褪せていない。スティーブン・ダルドリーが優れた映像作家であることがよくわかる。ジェイミー・ベルがスローモーションで跳ね続ける、印象的なオープニング。
舞台となる炭鉱町の佇まいがよい。家を出ると坂道。ベルが感情を抑えきれず踊りながら駆けていくシーンも、勾配をうまく活かして撮られている。ボクシングクラブとバレエ教室が同居するホールの静謐さも映画の空気感を形作るのに一役買っている。
それにしてもベルの身体性は素晴らしい。無意識に身体が動いているとしか見えない活力。バレエダンサーよりもタップダンサーになりそうな感じではあるが。それを支える、やさぐれているようで熱いジュリー・ウォルターズのキャラクタもカッコいい。
『フル・モンティ』『ブラス!』と同様、炭鉱不況を背景にしているが、この映画では炭鉱ストやスト破りが都合よく作劇に使われている感は否めない。父や兄のキャラクタも一貫しない。LGBTの親友の存在も、もう少し活かしようがあったのでは。