緑雨

生きる LIVINGの緑雨のレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
3.8
思っていた以上に、オリジナルに対して誠実なリメイクだった。

オリジナル黒澤版の肝となる精神性はリスペクトされ、役所のたらい回し、ゆきずりで出会った男との放蕩、葬式での回想、雪の中のブランコなど、鍵となるシーンはきちんと踏襲されているが、少しずつニュアンスが変えられていて、それでいて作品全体の調和は保たれている。

生きることへの無骨な執念が感じられた黒澤・志村版と比べると、ビル・ナイはかなりスマートで作品全体の印象もスタイリッシュ。まずクラシカルなタイトルバックに魅入らされるし、通勤列車や役所の建物の雰囲気も気品がある。新入り職員や同僚女性の役割も、黒澤版より血の通ったものになっていながら慎ましい。

じんわりと心に染みるような余韻を残す佳作に仕上がっている。
緑雨

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