緑雨

ミッドナイトスワンの緑雨のレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
3.8
オープニングシーンを観て、コメディタッチの映画なのかと思ったら大間違い、予期せぬ方向へと物語は展開していく。

観ていて苦しくなってくるようなシーンも多いが、一果役・服部樹咲のダイヤの原石たる圧倒的存在感が清洌さをもたらす。さらに、一果のバレエ友達となるりん(上野鈴華)の、危うさと闇の深さを含んだ造形が凄い。屋上で煙草を吸いながらりんと一果が会話するシーンの背徳感。コンクールでの一果と、テラスパーティで同じ曲で踊るりんをクロスカッティングで繋ぐシーンは結末も含めて鳥肌モノ。

この2人の少女と、2人に関わるバレエ教師・真飛聖の真摯さが作品を支えているように感じるが、彼女たちを引き立てるかのように堅実に難しい役をこなしてしまう草彅剛の地力も見直してしまった。

惜しむらくは凪沙のトランスジェンダーとしての苦しい生き様の物語が案外ステロタイプなこと。

凪沙が勤めるショーパブの楽屋の照明、凪沙の部屋に映り込むネオンと水槽の光、奥行きのあるバレエ教室の趣きのある薄暗さと窓からの光など、印象的なライティングが数多い。

ラストにニューヨークでのコンクールの件りと回想を置くことでわかりやすくはなったのだが、個人的には、その前の、まるで『ベニスに死す』のような海辺のシーンで終わった方がよかったと思ってしまう。扇情的なピアノ曲が流れる中、ぐんぐんと沖へと進んでいく一果。
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