こたつむり

新幹線大爆破のこたつむりのレビュー・感想・評価

新幹線大爆破(1975年製作の映画)
3.9
♪ 鉄ちゃん、鉄ちゃん、ダメ鉄ちゃん。
  それじゃあダメだ、とっつかまるぞ。

思わず涙が流れるくらいに興奮する前半。
もうね。「サスペンスって簡単だね、父ちゃん」なんて言いたくなるほどに盛り上げてくるのです。これが邦画の底力。名優そろい踏みでガンガンと迫ってきますからね。いやぁ。最高ですね。

特に総合指令役の宇津井健さんですよ。
相変わらずの渋さにクラクラきます。
見事に“表情で”語る場面は鳥肌が立ちました。

それに犯人役は高倉健さん。
新幹線の運転手は千葉真一さん…と熱い、熱い、熱い。画面が焼き付くのではないか、というくらいにガンガンと燃え盛っていますよ。うひひ。シビレるなあ。

そして、当時の世相が伺える“警察の無能さ”。官憲に対する視線が厳しかったのでしょうね。喜劇を思わせるほどに警察が“空回り”なのは、現代の視点で捉えると若干イライラしますが、過激派の存在が“日常”の時代。その背景と切り離して考えてはいけないのでしょう。

ただ、その影響か、あるいは詰め込み過ぎたのか。風呂敷を広げて畳みきれていないのは残念な限り。やはり、勢いだけで突っ走るのは中盤までであり、後半は着地点を見据えて丁寧に行くことが重要なのだと実感しました。

また、そんな気持ちになってしまったからなのか。大仰な演出に違和感を抱いてしまったのです。特に演歌が流れる場面と女性の胸の谷間を強調する場面は…んー。監督さんの趣味が出たのでしょうか?

まあ、そんなわけで。
多少は難があるものの、荒々しいエネルギーに満ちた傑作。70年代の狂気と熱量を堪能するには最高の逸品です。しかも、鑑賞後に知りましたが、旧国鉄が協力していない…という事実には言葉がありません。体裁にこだわる現代では絶対に作れない作品ですよ。

それにしても、鉄道関連のウィキペディアは“濃密”ですね。本作の題材も新幹線ですから、他の映画と比べて五割り増しくらいの情報密度でした。鑑賞後に読むことをオススメしますよ。
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