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月に囚われた男のTAのレビュー・感想・評価

月に囚われた男(2009年製作の映画)
4.2
とても質の良いSFでした。
ミステリーの要素が強いんだけど、終盤に差し掛かって主人公サムが真実と向き合い、ある人物と通信機器で通話する場面はあまりに切なくて、思わず涙を浮かべてしまった。
ケヴィン・スペイシーがガーティという人工知能の声のみの出演をしているが、彼は機械的で無機質な喋りをしながら、その落ち着いた語り口に機械のアームやレンズの動き、画面の表示が加わるだけで演技が成り立っていたし、彼の、と言うよりガーティの切ない表情が手に取るように見えてきました。
全体を彩るクリント・マンセルの音楽も美しい。ずっと流していたいと思う。
映像は特殊効果が盛り込まれてるはずなのに過剰な不自然さが無く、不可思議なストーリーに集中させてくれた。アイデアは古典的でありながら、新しい画を幾つも見せてくれます。
ラストについては懲りすぎるときっと仰々しくなり、内容によっては作品の雰囲気が損なわれていたかもしれないので、アレで満足。
これはラストで魅せる映画ではないんだし。
そう言えば、所々韓国語が入ったりハングル文字が見えたりするのは、ルナ産業が韓国資本だから?ルナ産業の幹部と思われる人物の隣にいる人、アジア人っぽく見えなくは無いけどね。
監督はデヴィッド・ボゥイの実息らしい。
いやはや、未だ続く余韻。
こういう作品は夜中に、雑音の無い空間で静かに観たいものです。
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