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最強のふたりのこのレビュー・感想・評価

最強のふたり(2011年製作の映画)
4.0
大学生の頃見て以来だから実に8年振りくらい。こんなに良作だったっけ?と驚くと共に心を揺れ動かされた。

健常者と障害者、黒人と白人、といういわば対局をなすパーソナリティを持つ2人の人間が、互いを理解することで絆を深めていく。

だがそれは両者とも「彼にはこういう特性がある、自分とは異なる彼を理解しよう」と試みたことによって育まれた関係では決してない。障害者だろうが黒人だろうが関係ない、1人の人間として対等に接するという彼らのスタンスが最高の形で合致したからである。

下半身不随になって生きることに息苦しさを覚えていたフィリップにとって、気遣いも容赦もないブラックジョークを吐き捨てていく一見野蛮なドリスのような存在が居心地が良かったのだろう。

きっと周りの人間に「なんでそんなことをするんだ、障害者だぞ!下半身不随だぞ!」とまくし立てられても、ドリスは「だから?何がまずいの?」と平然とそれが当たり前かのように己の考えを貫いていくだろう。

社会的ハンデを背負った人間にとって、そういうスタンスにどれだけ救われるかは計り知れない。

作中のフィリップの一つ一つのセリフが刺さる。「体の痛みは去るが心痛は残る」
痛みというトピックに対して対比表現を用いて己の苦痛を表現するあたり、文通での指摘センスも存分に現れていて、第三者の我々もその苦しみのほんのわずか一部に触れることができたのかもしれない。

大富豪のフィリップにとって、ドリスのエンターテイナー性はどれだけの大金を詰んでも手に入らなかった刺激であることは間違いない。今作は珍しく邦題にもセンスを感じられる。

美談で終わっているかのように見えるが、一方でドリスの横暴さは時としてフィリップを危険に晒す可能性もある。当然その側面から考えると、良識ある介護関連の専門資格所有者などの方が適しているとも言える。

だが、ドリスに会う前のフィリップは生への執着なく、下手したらこの場で死んでもやむを得ないとばかりに考えていたのかもしれない。だからこそドリスとの時間を過ごす中で彼は、安全な場所から出て命を落としてももはや本望であるとでも考えていた可能性もある。

ドリスがフィリップを支えるのみならず、その逆もまた然り。ドリスにとってもフィリップはなくてはならない存在となった。だからこそ彼らは最強なんだと思う。
こ