こ

ブルータル・ジャスティスのこのレビュー・感想・評価

ブルータル・ジャスティス(2018年製作の映画)
3.8
政治的抑圧と人種差別主義によって1つの正義が形を変えていく様を描いたクライム作品。でも形を変えようとそれは完全な悪にはなりきらず、まさしく題名通り「野蛮な悪」へと変容を遂げる。

十数年前ならまだしも、3年前の作品で未だに人種差別主義が日常的に蔓延っているのは悲観的にならざるを得ないし、未だにこのトピックを取り上げるのは人類としての進歩が見られないとつい感じてしまう。

白人が黒人を蔑み、黒人はそれに反発し非力な白人を敵視する、エンドレスで不毛な対立である。

計画を進めていく過程で、ブレットとトニーに幾分かの迷いが生じていたのはやはり刑事としての人間味が感じられたし、不条理な社会への反発をしかけながらも、己の信念と美学に基づいて行動する。

これは刑事という職に限らず、社内政治と時代の変容に順応できず、息苦しさを感じながら社会を生きている全ての人間に通じるものがあると思う。

自我を出すことで同調圧力に押しつぶされる。主張を試みれば異端者として顔を公開され、社会的に再起不能になり得るケースも多々ある。

人種差別は幾多にわたって存在する問題の氷山の一角に過ぎない。そんな世界が国家権力という揺るぎない正義を危なっかしいものにすることもあるという、一種の警告とも取れる。

ブレットとトニーのように帰るべき場所、背負うもの、互いの存在という精神的支柱がない人間は、ボーゲルマンのような悪にさえなりうる可能性もある。

2020年にこれだけ「昔」をイメージさせるような作品を作り出すのは凄いし、その趣旨にマッドマックス時代とは一味違った、哀愁漂うメル・ギブソンが見事にマッチしている。
こ