くわまんG

善き人のためのソナタのくわまんGのレビュー・感想・評価

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)
4.0
舞台は東ドイツ、壁崩壊の5年前。不均等に集中した権力が、持たざる大多数の自由を奪っていた時代。抑圧と暴力に翻弄されながらも、尊厳を保って生きた人達を描いた讃歌です。

勤勉実直で忠実な、国家の僕とでも言うべき主人公。その環境と性格ゆえ他人に心を開く術も知らず、慣れ、忘れ、己を偽り、漫然と日々を消化していました。しかしある芸術家の監視をしはじめて以来、いつからか終わりの知れぬ自問自答に陥っていたことに気づき…。

自由は人々に歓びと苦悩を与えます。解き放たれた善良な表現者は虚構で真理を炙り出し、さもしいクズの手元には虚無が残ります。人を呪わば穴二つ、情けは人のためならず。泣かされます。

善悪や正誤の彼岸はまた別の議論として、人の尊厳に触れた因果応報のお話でした。
素晴らしいです。ぜひどうぞ。