ナツミオ

日の名残りのナツミオのレビュー・感想・評価

日の名残り(1993年製作の映画)
3.9
WOWOW録画鑑賞
【オスカー俳優アンソニー・ホプキンス】
“プロに徹した男の孤独"

なかなかに渋い作品でしたが、良かった‼️

英国の名門家に一生を捧げてきた老執事が自身の半生を回想し、職務に忠実なあまり断ち切ってしまった愛を確かめるさまを描いた人間ドラマ。

2017年度ノーベル文学賞を受賞した英国人作家、カズオ・イシグロによる同名小説を、『眺めのいい部屋』(1986)の名匠ジェームズ・アイヴォリー監督が華麗に映画化した、大人のドラマ。

アカデミー賞8部門ノミネート(主演男優・主演女優・美術・衣装デザイン・監督・作曲・作品・脚本)

原題 『The Remains of the Day』

1993年米作品
監督 ジェームズ・アイヴォリー
脚本 ルース・プラワー・ジャブヴァーラ
原作 カズオ・イシグロ
音楽 リチャード・ロビンス
撮影 トニー・ピアース=ロバーツ
出演 アンソニー・ホプキンス エマ・トンプソン ヒュー・グラント ジェームズ・フォックス クリストファー・リーヴ ピーター・ヴォーン 

(WOWOW番組内容より)
1958年、オックスフォード。
貴族のダーリントン卿 (フォックス)の屋敷でずっと働いてきた老執事スティーヴンス(ホプキンス)だが貴族が亡くなった後、屋敷は米国人の富豪ルイス(リーヴ)のものとなり、スティーヴンス以外の使用人たちは屋敷を去ってしまっていた。
そんなある日、スティーヴンスのもとに以前屋敷で働いていたミス・ケントン(トンプソン)から手紙が届き、彼は彼女に会いに行くことに。かつてケントンはスティーヴンスに好意を抱いていたが、別の男性からプロポーズされ……。

原作は、英国在住の日本人作家カズオ・イシグロ(石黒一雄)がTVドラマ用の脚本を改稿した同名小説(中央公論社)。
原作は1989年に英語圏最高の文学賞とされるブッカー賞を、2017年にノーベル文学賞を受賞した。

まず、監督のジェームズ・アイヴォリーはアメリカ人なんですね。
イギリス人監督でないのに驚き‼️
父はアイルランド系、母はフランス系アメリカ人の血筋も関係している⁈
”英国"と”英国人"を違和感なく描いていると感じた。

時代は、1958年のオックスフォード。
老執事スティーヴンスが過去を回想し、時代は1920年代へ。

スティーヴンス役は名優アンソニー・ホプキンス。感情を表に出さず、名門貴族ダーリントン卿に自分の一生を捧げて仕える、プロの執事を演じる。

そして、女中頭として雇われたミス・ケントン役にエマ・トンプソン。
勝気で素直、思った事は意見を言い、仕事の気配りも出来る女性。
感情を表さないスティーヴンスに、ミス・ケントンが徐々に惹かれていく。
アイヴォリー監督の前作『ハワーズ・エンド』(1992)でアカデミー主演女優賞を獲得。本作でもノミネート。

ダーリントン卿役にジェームズ・フォックス。兄も俳優のエドワード。
70年代は福音派の宣教活動で俳優休業。

ダーリントン卿が名付け親になった青年カーディナルに若きヒュー・グラント発見‼️

ダーリントン卿死去後、屋敷を買い取ったアメリカ人富豪、元議員ルイス役にクリストファー・リーヴ。
どうしてもスーパーマンのイメージが強い。
ルイス議員が戦前のスピーチでダーリントン卿を”政治に関してはアマチュア"と呼ぶスピーチが印象深い。

時代は1920年代から1930年代へと移り変わり、ダーリントン卿は、第一次大戦後のドイツ復興の援助に力を注ぎ、非公式の国際会議を頻繁に開催していた。
ナチスが政権を握った後も、理想主義からシンパとして擁護する立場を取る。
1936年、卿は急速に反ユダヤ主義に傾き、ドイツからの避難民であるユダヤ人の女中たちを解雇する。

当惑しながらも、主人への忠誠心から従うスティーヴンスと、卿に激しく抗議するケントン。
2年後、ユダヤ人を解雇したことを後悔した卿は、彼女たちを捜すようスティーヴンスに頼み、彼は喜び勇んでこのことをケントンに告げる。
このあたりから、彼女は彼が心を傷めていたことを初めて知り、彼に親しみを感じていく。

ミス・ケントンがスティーヴンスの部屋を訪ね、読んでいる本を訊ね、答えない彼から本をもぎ取り場面。
2人の感情と視線が交錯するシーンが印象に残る。

また、屋敷で働くベン(スミス)からプロポーズされたミス・ケントンが心を乱し、最後の期待をかけ、スティーヴンスに結婚を決めたことを明かすところも彼女の気持ちが痛い程良くわかるシーン。

そんな彼女の気持ちに応えないスティーヴンスは、儀礼的に祝福を述べるだけだった…
部屋で泣き崩れる彼女に仕事の件で訪ねたスティーヴンスは、慰めの言葉も掛けない。
エマ・トンプソンの演技が光る。

それから20年ぶりに再会した2人。孫が生まれるため仕事は手伝えないと言うベン夫人の手を固く握りしめたスティーヴンスは、雨の中、彼女をバス停まで見送るシーン。彼女へキスもせず別れを告げた後、バスの彼女の寂しげな表情も余韻を残す。

淡々とした描写、2人の淡い恋心。
若い人には少し退屈かもしれないが、余韻の残る2人の演技は観る価値ある作品。




忘備録(ネタバレなし)
キャスト
ジェームズ・スティーヴンス Stavens
- アンソニー・ホプキンス

ミス・ケントン Miss Kenton
- エマ・トンプソン

・ダーリントン卿 Lord Darlington
- ジェームズ・フォックス

・ルイス Lewis
- クリストファー・リーヴ

・ウィリアム・スティーヴンス(スティーヴンスの父親) Father
- ピーター・ヴォーン

・カーディナル(ダーリントン卿が名付け親になった青年) Cardinal
- ヒュー・グラント

・スペンサー Spencer
- パトリック・ゴッドフリー

・デュボン・ディブリー Dupon D'Ivy
- マイケル・ロンズデール

・ネヴィル・チェンバレン(英国首相)
- フランク・シェリー

・Benn
- ティム・ピゴット・スミス
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