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日の名残りのdojiのネタバレレビュー・内容・結末

日の名残り(1993年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ときどき思い返して観る本作だけれど、冷静に考えると、第二次大戦へと向かっていく世界の不穏な空気とお屋敷に勤める執事たちの暮らしの描き込みにおもしろさがある映画だなと、あたりまえのことを思ったりしたのだけれど、それよりもぼくはどうしてもアンソニー・ホプキンス演じる主人公・スティーブンスの奥ゆかしさというより抑圧された内面を感じさせるさみしくかなしい表情ばかりが記憶に残ってしまう。父との微妙な距離感や、仕事に逃げ込むことで現実を見ようとしない彼の弱さ。読んでいる本を聞かれてミス・ケントンと少しじゃれあうシーン、部屋の中の暗がりの方へと隠れていくスティーブンスはみていて胸が痛くなる。そして再会したあと、結局なにも言えないまま別れてしまった彼女を見送る姿には、どうしようもなさしかない。きっと観る人にとっては腹立たしいのだろう。けれどもここにはどうしたってうまくやれない、やれなかったかなしみを、抱えて生きていくしかない孤独がある。だからときどき観返す。
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