NAOKI

青い春のNAOKIのレビュー・感想・評価

青い春(2001年製作の映画)
3.8
ケンジが借りてきた馴れないトラックを工場の駐車場にバックで停めようとしている…

ケンジが独り暮らしを始めるアパートへの引っ越しに中学時代からの友達が集まった。
終わってトラックを返しに来たところだ、辺りはもう暗くなり始めていた。

「ター坊、やめとけって」
おれが止めるのも聞かずター坊はいいからいいからとニヤつきながら…のろのろバックしているトラックの前面バンパーに飛び乗りフロントガラスに上半身をベターっとくっつけた。

運転しているケンジは後ろを向いて慎重にバックさせているからこれに気づかない。

「ひゃー!」
薄暗い工場の中にケンジの悲鳴が響き渡る。
そりゃビックリするよな…トラック停めてホッとして前を向くとフロントガラスに得体の知れないものがベターっとくっついているんだから😁💦

「もう~おれは絶対いつか心臓麻痺で死ぬ…」
ケンジはほんとに心臓の辺りを押さえながら工場から怒ったように出てきた。
ター坊はケラケラ笑いながらケンジの肩を抱いている…
「ター坊はしょうがねぇな💦」でもみんな笑う…
ター坊はそんな子供じみたイタズラが大好きなやつだった。

ター坊はミッシェル・ガン・エレファントの大ファンで…彼のたっての希望でみんなでこの映画を観に行ったんだ。

オープニング…屋上のシーン…
スローモーションでワルガキたちが非常階段を降りるシーンで「赤毛のケリー」がかかる。
おれは全身総毛立つような気がしました。
かっこえぇ💦

あの娘描くのは砂漠に降る雪
ゆらいで光るオアシス・アイス

まぁ、陰鬱な青春映画ですよ😁でもおれたちに鮮明な印象を残しました。
松田龍平が一人でサッカーをするシーンにかかる「ドロップ」

ぶらぶらと夜になる
ぶらぶらと夜を行く
なめつくしたドロップの気持ち♪

それからたいして月日もたってない頃…ター坊が癌らしいと噂を聞いた…
若い頃の癌は驚くほど進行が早い…あれよあれよと思ううちにター坊はこの世界から姿を消してしまった💦
見舞いに行ったとき若いナースをきゃーきゃー言わせて騒いでいたくせにあっという間で悲しむ暇もない…引っ越しのメンバーが葬式でまた集まってなんだか呆然としているケンジの姿が妙に印象に残った。

「ター坊…今じゃお前を思い出すのも「青い春」観たときかミッシェル聞いた時ぐらいしかなくなったな」
仕事帰りに遠回りして湾岸道路を走る🚗
平日の夜の湾岸道路なんてほとんど車もいない…
「ほうら、ター坊…弔いだぁ」大音量でミッシェルを流す♪

後ろで赤色灯がクルリと回る…
いつの間にかパトカーが後ろに付いていてブツリとマイクの音…
「すこし、ボリューム下げなさい」ぶっきらぼうな男の声…

普通ならすいまっせん~ってペコペコ頭を下げるところだが…ター坊だったらきっとこうだな…とニヤリと笑って更にボリュームをあげる💦
パトカーは横に並んで
「夜中だからね…ボリューム下げよう」
首をひねって顔を斜めにしてパトカーを睨む…まだニキビ面の若い警官が見える。
「年甲斐もなくこんなことしたら逮捕されるかな」
なんか可笑しくなってきて更にボリュームをあげる…

ぶらぶらと夜になる
ぶらぶらと夜を行く
なめつくしたドロップの気持ち♪

「もしこれで逮捕されたらター坊…お前のせいだからな」

夜の湾岸道路をミッシェル大音量でならしてるおれの車とパトカーは法定速度で並んだまま走り続けた…
NAOKI

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