NAOKI

怪物のNAOKIのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

2回行きました(笑)

いや…すごい映画だったね〜
是枝監督の映画にしては面白過ぎる(笑)
脚本の坂元さんとのタッグがマジックを起こしてました。カンヌで脚本賞も納得の面白さ…

ある町で起きた事件をシングルマザー、教師、子供の各々の視点で順番に描いていきます…

「羅生門」スタイルだと言われてますが違うよね…あれは三人三様の言い分を「嘘」も「思い込み」もそのまま映像化して見せるやり方であって去年のリドスコの「最後の決闘裁判」がまさにそうでした。
この「怪物」は事件の真実をちゃんと描いており(妄想や夢はあるかもしれないが)それが視点によって変わるというやり方…これは「桐島、部活やめるってよ」スタイルだなと思いました。

1度目鑑賞時…そのミステリアスなストーリーにすっかり引き込まれ翻弄されました。
この映画には「ヒメアノ〜ル」の森田剛や「悪の教典」のハスミン(伊藤英明)みたいな「怪物」は登場しません。(登場してたら大変だ笑)その代わり誰もが怪物になりうるんだ(自覚がないにしても)という仕組みに気付きます。

ラスト…あまりに美しいラストに2人の幸福を信じ…同時に祈りつつこの映画を見終えたのですが考えれば考えるほどモヤモヤ…

色んなことがはっきりしないまま(もちろん意図的であると思うのだが)この映画はおわります。

冒頭の火災は本当に誰かによる放火だったのか?
校長先生の事故の噂は本当なのか?
あのクラスメートの女の子はどういうつもりで?
結局…登場人物たちはどんな着地を迎えたのか?

その疑問を解くシーンがあったはずだとあれこれ思い返していくうちに気付くのです…

「あ…怪物は…おれか?」

勝手な憶測や押し付けが誰かを苦しめていることに気がつかない怪物たち…

「火事の時ガールズバーに居たんですって」
「普通でいいのよ…普通で」
「それでも男かぁ?がんばれ!」
「猫で遊んでるところを見たんです」

1度目の鑑賞で特に違和感を感じたところ…

母親と先生が台風の夜、廃棄電車に湊を探しに来るシーン…電車は土砂崩れで横倒しになっていて2人は必死に泥だらけの窓を手で拭くのだが、拭いても拭いても泥水で中が見えない…やっと窓を開けて中を覗き込む…ぐちゃぐちゃになってる内部が見えたところでこのシーンは終わる。

ラストの光の中に飛び出していく2人…
「生まれ変わったのかな?」
「そんなことない…そのままだよ」
泥水と台風一過のラストがうまく繋がらないのです。
ラスト、行き止まりだったはずの施錠された金網がなくなっていてどこまでも走っていけるのは現実ではない証拠ではないのか?

2度目の鑑賞でその辺を考察しながら見た結果また気になるシーンが出てきたりして…(笑)

あの髪の長いクラスメートの女の子…音楽室から2人が出てきた時横の洗面所で手を洗ってるのはこの子だろう?…湊たちが音楽室で聞いた物音はこの子が盗み見ていたのか?この子はいつもマンガを読んでいたけどあのマンガはどうやらBL(ボーイズラブ)みたいだった!

そして台風の夜、湊がお風呂場の依里を発見するシーン(身体中のアザが見えるとこ)
このシーンで湊がなんとか依里をバスタブから引っ張り出すんだけど最後まで依里は意識がないように見える…次のシーン2人は元気に自転車で電車に向かう!ここが繋がらない…

依里はこの時すでに虐待で命を落としていたのでは?(信じたくないが…)

2人で電車を出発させるシーン…ここは明らかに土砂崩れの音が聞こえて来る…ここからすでに夢だったのでは?

色々考えてこの映画の結末はいく通りもありえることに気づきました。

①2人は土砂崩れからなんとか生き残り、この先色々あるだろうけど未来(大人)に向かって走り出したのだ…という結末。

②2人とも土砂崩れで命を失ってしまった。悲しいけれどめんどくさい現世から解放されて2人手に手をとって別世界へ旅立ったのだ…という結末。

③依里は自宅の浴室で虐待によって命を失い湊は電車で土砂崩れで命を失ってしまったという結末。

④逆に依里は湊の通報により保護されて中村獅童は逮捕され…湊は電車で土砂崩れに遭うが母親と先生に救われて…2人とも助かるという結末…

⑤④のパターンで湊か依里のどちらかが命を落としてしまったというふた通りの結末。

このようにあらゆる結末にとれるように作ってあるのだ。そしてどうしても気になる「銀河鉄道の夜」との類似…

電車の内部に2人で宇宙をイメージさせる飾り付け…宇宙の終わりの話…「星野依里」という名前…

ジョバンニはいじめられていて、カムパネルラはそのいじめっ子達のグループにいたが銀河鉄道で2人は仲良くなるけどこの時カムパネルラはすでにいじめっ子のザネリを救うために川で溺れ死んでいることを戻って来たジョバンニは知ることになる。

これと被るんだよな〜
どうしても死の気配から逃れられない結末にも見えるのだ。ただ2人は助かってると信じたい気持ちがあのラストを希望に溢れたハッピーエンドに見せるのだ…いやもちろんそれが真実かもしれないしどの結末かの正解はないと思います。
観た人がどう感じるか?でしょう。

それはそうと俳優陣は子役も含めてみんな素晴らしいんだけど校長を演じた田中裕子はレベチにものすごくて…この人「怪物」だぁ!とおれは思いました(笑)
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