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仕掛人・藤枝梅安のNAOKIのレビュー・感想・評価

仕掛人・藤枝梅安(2023年製作の映画)
3.8
元々SF小説好きなのですが学生時代に初めて「時代小説」なるジャンルに手を出してハマったことがあります。

本屋でなんか面白そうな本ないかな〜なんてぶらついている時ふと池波正太郎先生の仕掛人藤枝梅安シリーズが目に止まりました。5冊ぐらい出てたかな?
あ!これ知ってる!テレビの必殺シリーズの原作だよな…この時は全部読む気なんてさらさらなく、この辺が脂が乗って1番面白いんじゃないか?とシリーズ3作目ぐらいを買って帰りました。
原作はテレビの「必殺シリーズ」の雰囲気とはまったく違い、しっとりとした緻密で大人な時代劇でした。
特に印象に残ったのは江戸に暮らす市井の人々の生活とそこに出てくる食べ物の数々…

「仕掛人・藤枝梅安」

池波正太郎生誕100周年記念作品!
そうか…池波先生亡くなってからもう30年以上も経つのか…

数多い先生の映像化作品(テレビも含めて)の中でこれはベストに近いのではないか?と思いました。

藤枝梅安シリーズの持つ雰囲気をよく伝えてくれてます。

原作を読んでおれが最も驚いたのは「江戸」という時代のイメージが変わってしまったこと…

今から400年以上昔の日本…
士農工商下のまだまだ野蛮な発展途上の日本…勝手にこんなイメージを持っていたのですが…

当時江戸を訪れた外国人がその静謐さと美しさに驚いたと言います。江戸は当時世界的にも類を見ない大都市だったのです。

この映画を観ると原作を読んだ時に頭の中で思い浮かべた江戸の姿が見事に再現されている!と思いました。

豊川悦司兄貴がこれほど梅安のイメージにピッタリとは思いもしませんでした。そしてそれより驚いたのが片岡愛之助の彦次郎…やはり歌舞伎の人は時代劇にドンピシャ…何か色気さえ感じる佇まいでした。

さて池波正太郎時代小説のあまりの面白さに出会ってしまったおれは藤枝梅安を全部読み「剣客商売」に夢中になりその他の短編集や長編をことごとく読破!ついには「鬼平犯科帳」全二十二巻(当時)も読破してしまったのでした。まるで何かに取り憑かれたように池波正太郎を読みまくったおれは「次は?他にないのか?」と読むものがなくなった時、池波正太郎先生の訃報が飛び込んできたのでした。

なんだか不思議な気分になりました…梅安に始まり熱病のように先生の著作を制覇した途端の訃報だったので…

死後遺作として出版されたのが「仕掛人藤枝梅安・梅安冬時雨」…

おれは夢中で読み進め話しはこれから…というところでページをめくると真っ白なページの中央に「絶筆」の文字…

生まれて初めて途中で作家が亡くなった「絶筆」を経験したのでした(泣)
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