たく

さらば映画の友よ インディアンサマーのたくのレビュー・感想・評価

3.6
原田眞人の映画監督デビュー作で、映画オタクの二人の男の奇妙な出会いと束の間の友情がなんだか切なかった。川谷拓三のいちど信じ込んだらとことん突き進む狂気がハマってて、当時のギラついた時代背景を感じさせた。デビュー間もない浅野温子も若い魅力が弾けてたね。

1年で365本の映画鑑賞を20年続けることを目標にしてる中年映画オタクのダンが、映画館で鑑賞中のトラブルから優男の青年シューマと知り合い、彼も映画オタクと知って意気投合する。シューマを見送ろうするダンが、結局彼の自宅までついていって行っちゃうところに彼が抱える何ともいえない寂しさが滲み出る。ここから二人の仲睦まじい関係が描かれていくんだけど、やがて謎めいた女性のミナミが二人の間に入ってきて関係を狂わせるのがよくあるパターンで、やっぱり女は怖いよね。

ダンが何かと映画のセリフにかこつけたり、「革命児サパタ」のマーロン・ブランドのモノマネをしたり、外で雨が降ってれば「雨に唄えば」の踊りを始めちゃう。その程度であればまだいいんだけど、シューマのミナミに対する思いの本気度を感じた彼が現実と虚構の境界を踏み越えて危ない方向へと向かっていく。終盤のバイオレンスはまるで「タクシー・ドライバー」みたいで、最後にダンが勃起するのは、これこそ彼が生きたかった映画的な世界だってことなんだろうね。
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