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アンドレイ・ルブリョフ 動乱そして沈黙(第一部) 試練そして復活(第二部)のRのレビュー・感想・評価

4.7
神なんておるかどうかわからんし、キリスト教は教義デタラメ、坊さんもみんな何もせんと世の中を嘆き、人間はあまりにも愚かで悲劇を繰り返してばかり。どうしようもない世界だけど、そんな世界に奇跡を起こせるのは、人間のなかに宿る妙なる力とひたむきな情熱だけ、そのことをこれほどの説得力と感動をもって描いた映画が他にあろうか。教会の壁画を描く若きアンドレイルブリョフがさまざまな人間の罪や禍に直面し、自らも罪を犯し、壁画から身を引き、ことばを捨て、世を捨て、老いゆき、その果てに、若きボリスを遠くから見つめるシーンはほんまに心が震えた。クライマックスはすごい緊張感のサスペンスで、じらしてじらして……のあとのあの感動と言ったらない。そのあとのボリスの涙とルブリョフの……はもう!うおーーーーー!と吼えてしもたやん。15年くらい前に見たときは何と起伏のない映画だろうと驚いたものやけど、先日見た黒衣の刺客に比べたらアクション映画っすわ笑 寒々しい雨の荒野のシーンや、枯れた木々の並ぶシーン、ぬくもりのない教会のシーンなど、何とも言えない冷たい美しさをたたえた映像がすばらしいし、そのあとのラストはすごかったー! これは余談ですが、世界で成し遂げられた偉大なことや美しいことは、ほぼすべて宗教や哲学がきっかけになってるよな。人間や現世を超越した何かを感じるっていうのは、人間の中からすごいエネルギーを引き出す効果があるのは確かだ。と同時に宗教がためにゴミのような人間に堕するおそれもある。特にキリスト教はその差が激しいなと見てて思った。神秘主義的な宗教はそうなりがちなんやろね。本作では、宗教的なものが人間を縛りもし、チャンスを与えもする一方、人間に内在する力を人間が解放することにより成される偉業により焦点が置かれているのですばらしかった。やっぱ天命は果たさなければならないものなのだよ。と、いろいろ考えるポイントが多いし、ラストのカタルシスすごいし、最高っすね。タルコフスキーでは4番目に好きかもしれぬ。
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