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妖星ゴラスのRのレビュー・感想・評価

妖星ゴラス(1962年製作の映画)
3.4
元祖ゴジラの本田猪四郎監督によるアステロイド地球接近ディザスターSF大作ということで期待大で見たのですが、うーーーーん笑 まぁ、昔のSFという過去の遺物を見たな、という印象で終わってしまいました。たしかにものすごい人工と手間と職人技と組織力が投入されたというのは見てとれるのですが、本作の数年後に公開された衝撃的本格派2001年宇宙の旅や、その数年後のエイリアンなどと比べると、テレビ番組の延長線上のお茶目な作品くらいにおさまってしまいます。が、1960年代高度経済成長期真っ只中で大いなる盛り上がりを感じさせる浮かれっぷりは、混迷を極める現代日本とはまったく異なる別世界に感じられ、とても面白い。なんせ、最初に若い女性がふたりドライブで海岸へやって来て、水着はないけど裸で泳ぐわよーーーー!!! とハッスルしてるのは、国民総監視によるコンプラでがんじがらめのきゅうきゅうとした今の日本では考えられないオープンさ。ふたりがはしゃいでいるところ、突然ピカッと空が光ったかと思うと、ロケットがうち上がっている。そのロケットにはそれぞれの女の父とフィアンセが乗っているらしいのだが、打ち上げのことをすっかり忘れてて、あ、そうだったわねーーーーくらいのテンションでいてはります🤣 のんきやな。そのロケットは土星の探索に向かっている。ストーリー設定は1979年なので、当時どれほど宇宙開発に熱が入ってたかが感じられます。しかし、土星に近づくロケットは地球からの連絡で、質量が地球の6000倍もある巨大な遊星ゴラスが太陽系に向かっているので、調査に行くようにと命じられる。さっそく調査に向かったロケットは、哀しいかなゴラスのすさまじい引力に巻き込まれてしまい、真っ赤に燃える妖星に呑み込まれしまう……のんきだった女たち二人も悲嘆にくれてしまいます。どーでもよさそうだったのに!🤣 そして、データ解析の結果、今のままでは数年後に地球に衝突してしまう、ということで、ゴラスを爆破するか地球が逃げるか、その2つしかない!ってなって、前者は不可能であるため、後者が採用。え、そんなことできるん?とお思いになるでしょうが、国連での会議で、アメリカもソ連もそういった研究をしていたことから、もうそれしかあるまい!ということで大決定。この国連会議シーンでは、日本がゴラスのデータを豊富にもっているこということから諸国のリーダー的に振る舞い、またそういう風に扱われていて、当時イケイケドンドンで技術革新を推し進めていた日本国の矜持がモロに見れて面白い。いまは老害と煙たがられるおっさん達が張り切って権力を行使している姿は、沈黙に追い詰められ無我の境地に至りそうな現代のおっさんとはひと味もふた味も違う。何十兆円もの莫大なる金額を投資してふたたびゴラスに向けて調査ロケットを送るとき、ロケットに向かう乗組員たちが歌う少し物悲し気な軍歌調の歌の歌詞も興味深く、「狭い地球にゃ未練はないさ 未知の世界に 夢がある 夢がある 広い宇宙は 俺のもの 俺のもの はばたき行こう 空の果て でっかい希望だ 憧れだ おいら宇宙の おいら宇宙の おらい宇宙のパイロット!」と歌うんねんけど、気宇壮大なる歌詞だなぁ、と圧倒されてると、その歌が後のシーンにもまた出てきて、しかも1番で終わるかと思いきや、2番もきっちり全部歌って、謎に長いシーンになっていた。この歌に本作の情熱がしっかりこめられているゆえであろうか。で、地球を動かしてゴラスを回避するべく、世界で協力(!)して南極に基地を建築し始める。このシーンで注目すべきが、当時の日本が誇っていた特撮なのですが……確かにすごく細かい職人芸に畏敬の念は湧きつつも、映像技術が上がりすぎてしまった現代の目で見ると、あきらかにミニチュアやし、重量感ないしで、やっぱ迫力には欠けてまうなーと。基地設置と同時に進行するロケットでの宇宙探索シーンも、2001年宇宙の旅に似たようなシーンがあるんやけど、2001の圧倒的な美術、リアルさ、不気味さ、迫力、と比べると手も足も出ません。まぁ比べる対象が悪いけど。ただ、やはり本作がゴジラなどの歴史的名作になり損ねている要因は、妖星ゴラスをめぐる人間ドラマがぜんぜんなくて、完全に対ゴラスのスペクタクルアクション大作になっちゃってるところなんではないな。そのポイントにおいては、技術的にもスピード感的にも完全に賞味期限切れ。ほとんどのシーンでまぁまぁ退屈してしまった。ただ、こんなに真剣なハードSF作品で、そんな展開あり⁈ そんなもん登場させる⁈ と、観客サービスとはいえ、突拍子もないびっくりなものが出てきて、意外過ぎてふいてしまいました。しかも地球を動かすためのぶおーーーーの迫力のなさよ笑 うちのコンロの強火の方が迫力あるわ。まぁ、それはしゃあないということで、とはいえ、津波のシーンは、東北の津波がフラッシュバックするという現代だからこその記憶と結びついて、何とも言い難い気持ちが湧き上がって来るし、すべてが終わったあとのセリフ、「新しい東京を作り直せばいいさ!」という希望に満ちた表現……能登での地震の復興がまったく進んでいない現代にはないモチベの高さに、日本人の気質ってこの数十年でほんとに変わり果ててしまったんだなーと感じざるを得ませんでした。とあるデータによると、今年の日本円の通貨価値はかのトルコリラを下回るほど下がっており、後進国の中でもひどく順位を落としてきているとうことで、今後ますますインフレが進んでいくこと必至、本作の時代に敷設されたインフラ老朽化の修繕や戦争によるインフラ費の高騰、さらに老後4000万円問題まで抱えてすっかり気力を失っている、まさに本作とは対極の現代日本に、今必要なのは、地球を動かすというのに負けないくらい度肝を抜くような大胆なアイディアと行動力なのかな、と本作を見ながら感じました。まぁ何より、水着ないなら裸で泳いじゃお!うふふふふ!!! くらいの大胆で自由な元気は最低限必要ですよね。そういう意味では、非常に興味深い映画ではありましたが……まぁ正直お勧めはできないかなー。僕にとって本作のピークはオープニングの宇宙を背景とした真っ赤でぶっとく巨大なタイトルコールと黄色のクレジットでした笑 あ、土星の輪っかが吸い取られてるのもおもろかったな😂 そのあと地球はどうするの?とか月はどうなるの?とかが心に浮かんでは消え、消えては浮かんでくる感じも👍
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