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レネットとミラベル/四つの冒険のRのレビュー・感想・評価

4.5
エリック ロメール監督作品。まだ2本目。何となくテキトーに選んで見たら、まぁ何とも言えない、言い難い、とても変な一作でした。まず、タイトルから分かるように、本作は二人の女子、レネットとミラベルが主人公で、4話の小さなエピソードをさらりと綴ったオムニバス的作品となっている。第一話目「青い時間」にてふたりは出会います。生粋のパリジェンヌであるミラベルは、田舎を旅行中、自転車に乗っていると、タイヤがパンクしてしまって、さてどうしようか、と悩んでいるところに、たまたま通りがかるのがレネット。自転車屋は遠いから、うちでパンクを直してあげるよ、と彼女の家に連れていかれると、それは納屋を家に改造した建物で、どうせなら案内してあげる、と言われたので入ってみると、彼女は一人暮らしで、絵を描きながら暮らしていて、パリにある美術学校に行きたがっている。田舎は静かだね、とコメントするミラベルに、レネットは、田舎はパリと同様、結構ずっと物音がしてるよ、と。聴いてみると、確かに、鳥やら虫やら風やらいろんな音が絶えずしている。だが、夜明け前に一分だけ、完全に無音になる「青い時間」という瞬間があって、それがすごいから体験してみましょうよ、ということで、ミラベルに一泊するよう誘うレネット。その誘いにのって、いざ「青い時間」がやってきて……という流れになるのであるが、とりあえず一話目からなかなか面白いのが、このふたりのキャラのコントラスト。ミラベルはいかにもパリの個人主義的都会暮らしに慣れた様子のサバサバした女子で、何が起こっても感情的になることがなく、面白そうな話だったら躊躇なくのっかるし、新しい体験にもオープン。多種多様な人々が一箇所に集まって暮らしてる都会だと、毛色の違う人間に出くわすのも当たり前やから、多少タイプや考えの違う人間でもまぁええんちゃう?くらいの温度感。それとは反対に、レネットはねっとりしてて、人を気に入ると、できるだけ一緒に何でもしたい、逆に気に入らないことがあると感情的になり、自分の考えに反するものはぺちゃくちゃ喋りたてて論破しようし、自分の好きなものや考えはしっかり主張せずにはいられない。そんな性格であるが故に、サバサバしたミラベルと仲良くなることもできた。本作の大きな魅力の一つは、そのようなまったく異なるタイプの対照的なふたりのやりとりの妙にある。一話目からそんな雰囲気が漂ってるので、一体どんな話が展開するのかとワクワクする。で、ミラベルは、ノリで、パリの美術学校に行きたいんやったら、うちのルームメイトが出て行くことになってるから、家賃安くなるし、ルームシェアしようよ、という話になり、面白うざおかしくもありつつ、ちょっと感動的な「青い時間」体験のあと、2話目からはパリで暮らすふたりの様子が描かれていく。第2話目「カフェのボーイ」では、ふたりの待ち合わせの場所のカフェにレネットが先に着いて、お茶した彼女はお札で代金を払おうとするんやけど、いや、そんなでかいのくずせるわけないだろ、てか、最初からそのこと分かっててお茶したんやろ、なんて悪徳な、と責められてしまう。そんなわけない、と言い張るも、まったく信じてくれないボーイさん…第3話「物乞い 窃盗常習犯 女詐欺師」では、街角の物乞いに小銭をやるレネットが、無視するミラベルに、え、なんであげないわけ? 困ってる人が目の前にるのに。ミラベルは、いや、全員にあげてたらキリがないし、ほんまに困ってるんかどうかもわからへんやん、と強く主張しつつ、実はちょっと気が変わってたりして、後日、困った人たちを助けてあげようとして、逆にヘンテコなことしてしまう笑 が、反対にレネットは親切心のせいで逆に痛い目に遭ってしまって……そして最後、第4話の「絵の販売」では、バイトをやめて家賃を払う金がないレネットが、ミラベルと相談して、自分の描いた絵を売ることにするんやけど、自分の趣味や考えについては口達者なレネットだが、商売の交渉は苦手、ということで、ふたりで計略を立て、逆に沈黙を貫くことで交渉を成功させようとする……という流れで、静けさに魅せられる最初のエピソードとは打って変わって、街で暮らすことのノイズをウィムジカルにコミカルにノンシャランに描いたあと、また沈黙に戻っていくという。面白いのは、2話以降はすべてお金の話であること。そして、お金の問題に直面することによって、ふたりの、特に、レネットのなかのお金に関しての道徳観、というかお金に対しての自分との関係というべきか、が変わっていく様子が興味深い。そして、最後の最後に、思わず、やられちゃったねってなオチを持ってくる。お金で回ってる人間社会における人間の振舞い方のプチ観察記みたいになってるのが小洒落てるなぁと思いました。それにしても、僕の知り合いでも、めちゃめちゃおしゃべりな人にかぎって、なぜか人一倍しずけさのある時間を好む傾向があるように感じられるのは気のせいだろうか。ひょっとしたら、頭の中で常に自分がしゃべってるから、時折何もかも空っぽにする時間が必要だったりするのかな、と思ったりする。僕は、現実世界においても、頭の中においても、そんなにおしゃべりな方ではないので、常に音楽を聴いてたり、映画を見たり、あまり沈黙の時間がないほうが心地よく感じるのだが。それにしても、本作で光っていたのが、ミラベルを演じるジェシカフォルドという女優さんのクールで凛としたカッコよさ、めちゃめちゃイケてました。比較的最近のフランス映画、アデル、ブルーは熱い色の主人公ふたりを足して2で割ったような雰囲気。めちゃめちゃイケてる。反対にレネットのイモ臭さ!笑 けど、カフェで待ってたミラベルがやって来たときのあまりにも嬉しそうなスマイルはとてもキュートでした!😁 さて、2作目のロメールでしたが、やっぱなかなか面白いな。大したこと起こらないけど、何となくずっと見ていたくなる感じ。ちょっと意地悪やし笑 他のも見てみようかな、という気がだんだん増してきましたよ!
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