TS

裸の島のTSのレビュー・感想・評価

裸の島(1960年製作の映画)
3.8
【全てを表情や行動で示す】81点
ーーーーーーーー
監督:新藤兼人
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:95分
ーーーーーーーー
やはり新藤兼人監督は人間を撮るのがうまい。『人間』を見たときも魅入ってしまいましたが、今作も相当なものでした。台詞と言える台詞は一切なし。本土での学校の歌や祭の歌などでは日本語が出てきますが、主要人物たちが会話をすることはありません。従って退屈な作品か。と思いきや全くそうでもなく、最後まで先が気になる作品でありました。

本土から少し離れた島に住むある家族。家族構成は夫と妻に、二人の息子。この家族は息子は舟で学校に行きながら、夫と妻は協働して島の斜面に真水を撒いていっています。困ったことに、この島で真水を得ることは困難であり、毎回毎回舟を出して本土にいっては川の水を桶に入れて運ばなければならないのです。極めて原始的な生活と言えますが、この家族たちは別に不幸とも思っていない。黙々と飯を食べては釜風呂で一日の疲れを癒す。海際で釣れた魚があれば喜んで本土で売ろうとする。その儲けたお金で休日遊園地にいったりする家族。良いではないですか。言語を通していないのでこの無言語空間から発生する家族愛は、人間だけでなく他の動物社会にも投影できそうです。

そんな家族にも、終盤とあることが起きますがやはり見ていて悲しい。人生何が起きるかわからない。だから楽しいと言えそうですが、その理不尽な結末には涙がでてしまいそうです。
言葉で示すのではなく、人間の表情や行動で全てを示そうとした新藤監督。他にも音楽で喜怒哀楽を示す部分もありますが、これらの手法はサイレント映画時代の作品を彷彿させられてしまいます。まさに裸の島。とある家族の日常が赤裸々に映し出されている、一風変わっていますが間違いなく名作でありましょう。
TS

TS