ドント

男はつらいよのドントのレビュー・感想・評価

男はつらいよ(1969年製作の映画)
3.5
68年。ご存じシリーズ第1弾。家出して20年の後に家に帰ってきたヤクザ者(物売りのテキ屋)、車寅次郎が巻き起こす恋と笑いの大騒動。後の「様式美」は1本目ですでに確立されている。
このシリーズが邦画でありつつその枠組からどこか「ズレ」て感じるのは、ひとえに車寅次郎というキャラクターの存在ゆえである。縁側でお見合いに行く行かないの話をしている叔母とさくら、2人だけなら面白味のないシーンだが、その真ん中にノソッと寅次郎が入ってきて動いてるだけで「ズレ」てしまう。寅次郎は現代では存在し得ないキャラとは言われるが、この頃だって存在し得ないのだ。ズレ続ける彼はひとっ所にいられないのである。
寅次郎は大変、大変に(2回書く)、困った野郎だが、構図も物語も演技も、この寅次郎の「ズレ」こそが映画の、シリーズの核。そしてそのズレがなくなるからこそ、結婚式でのある場面で感動が大きく打ち寄せる(でも袖はちぎれている)。イキのいい調子のよさと喜怒哀楽が跳ねて回るような90分。
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