緋里阿純

ルパン三世 風魔一族の陰謀の緋里阿純のレビュー・感想・評価

3.7
ルパン三世初のOVA作品。
劇場公開日が設定されているにも関わらず、上映時間が73分と中編映画程度の尺な事に疑問を持ち調べてみると、ソフト発売に先駆けて劇場公開されたOVAだからであると知り納得。
公式での扱いもあくまでOVAとのこと。

監修としてTV第1シリーズと『カリオストロの城』の作画監督であった大塚康生さんが参加している為、既に世間ではTV第2シリーズの赤ジャケットのルパンが主流であったであろう中、本作では緑ジャケットのルパンが採用されている。

当時経営不振に陥っていた制作会社の東京ムービーが、レギュラーキャスト陣のギャラを抑える為(また、スタッフからの現行キャスト陣への不満)に、原作者モンキー・パンチ先生や配給の東宝からの「現行キャスト陣へ変更の連絡を入れるように」という厳令を破り、キャスト陣に無断で声優変更を行い、ファンからも不評を買ったというかなり曰く付きの作品。
しかし、現在となっては、ルパンを演じた古川登志夫さんをはじめ、既に鬼籍に入った方含む変更キャスト陣、脇役を勤めた方々まで大ベテラン声優ばかりなのが凄い。

ストーリーは、五ェ門の墨縄家への婿入りによる結婚式を皮切りに、墨縄家に伝わる罪宝を狙う風魔一族との対決と、罪宝を巡る絡繰仕掛けの洞窟探検という王道アドベンチャー。舞台が日本の岐阜県・飛騨という渋いチョイスも面白い。

本作のキーパーソンを務めた五ェ門の活躍が目覚ましく、風魔一族のボスとの最終決戦は一見の価値あり。メインヒロインを務めた花嫁の紫との馴れ初めが妙にメロドラマ風なのも笑える。
反面、洞窟の仕掛けによって、時限式の崩落が訪れる都合上、銃声を響かせる事が命取りとなる為に銃の使用が制限され、ルパンや次元お得意の銃撃戦が見られなかったのは些か残念ではある。花嫁の紫に至っても、もう少し五ェ門との繋がりが感じられる描写が欲しかったところ。

特筆すべきは、アニメーション技術。序盤の結婚式襲撃からヌルヌルと動く作画は、セル画時代の作品とは思えない程滑らかで高クオリティー。戦闘シーンは勿論、2回挟まれるカーチェイスシーンの動きも見事。また、コミカルなシーン含め、何気ないシーンに至るまで、全体的に高水準で安定した作画力も素晴らしい。

問題の変更キャスト陣についても、古川登志夫さんの『うる星やつら』の諸星あたる味ある軽快なルパンをはじめ、銀河万丈さんの威厳ある次元、加藤精三さんの熱血漢な銭形、小山茉美さんの本家に引けを取らないセクシーな不二子まで、全員がそれぞれの持ち味を活かした新しいルパン像を見せてくれている。そんな中でも何より、塩沢兼人さんによる五ェ門が抜群にセクシーでハマり役である。

かなりクオリティーの高い作品であるだけに、レギュラーキャスト陣の変更という点が足を引っ張ってしまっているのは勿体無い。番外編として捉えるならば全然アリな作品なので、もっと現代でも多くの人の目に触れてほしい一作。
緋里阿純

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