ヘルシア

おもひでぽろぽろのヘルシアのネタバレレビュー・内容・結末

おもひでぽろぽろ(1991年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

小さい頃から田舎での生活に憧れていた主人公のタエ子が、小学五年生の記憶を回想しながら自然と田舎の人々の温かさに触れて、自分の心に素直になっていく。
小学五年生の回想では、タエ子の意地っ張りな性格が表現される描写が繰り返される。男子に生理だと思われたくなくて体育を見学したがらない場面、大して美味しくないパイナップルを口に押し込む場面、中華を食べに行くのに姉妹喧嘩で意固地になる場面など。大人になり、表面上はそのような意地っ張りな性格は見られなくなったが、トシオへの気持ちを素直に表現できない所は変わっていない。そんな自分の気持ちを知ってか知らずか、タエ子は淡々と田舎の生活を楽しんでいるように視聴者に見せる。トシオとの会話も自然と盛り上がり、仲を深めていく。価値観が似ており、次第に意気投合する2人。しかし、恋愛に発展する感触は出さない。タエ子は一時的に田舎に来ているだけの存在であることを自覚し、遠慮がある。加えて、素直になれない気持ちから、一歩踏み込めない。トシオにも遠慮がある。デートに誘うなど積極的な姿勢は見せるが、それはあくまでも人の良さから現れた行動である想像の域を出ない。タエ子が東京の人間であることも考慮してか、一時的なラブロマンスに浸ることがせめてもの楽しみであるかのようだ。
そんな2人を後押ししたのは、田舎の自然と人々の温かさ、そして過去の記憶だった。その一つ一つが、自分の気持ちを素直に表現してよいことを認めてくれた。支えてくれた。
帰りの電車の中、小学五年生の姿の自分や子供たちが「本当にいいの?」とタエ子に語りかけてきた。きっと、田舎のおばあちゃんたちはトシオに話すだろうし、あのような話をされた自分も、来年はもうここに来られない。決断をするのは今しかなかった。その状況と様々な支えが、彼女の意地っ張りな気持ちを解かし動かしたのだ。
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