あんず

PASSIONのあんずのレビュー・感想・評価

PASSION(2008年製作の映画)
4.4
大学院の修了製作で、こんなレベルの高いものを作ってしまうんだ~という驚き。この作品から『偶然と想像』に至るまで、私の観た作品に於いては、一貫して言葉と会話の重要性を説き、自分と向き合ってこそ他人と向き合えるというコミュニケーションの真髄を伝えてくれていると思った。

冒頭から昨日観た『ハッピーアワー』のデジャブのようなシーンがあり、退屈してしまうかも?という心配は杞憂に終わり、またも最後は、もう終わっちゃうの?この人たちのこれからをもっと観ていたいという気分にさせられた。なぜ飽きないか?って考えると登場人物(『偶然と想像』のキャストの人たちが出ていて、若いって思った)が違えば、会話も違うし、それぞれの本音も違って来るし、恋愛なんていう不確定要素はいつどうなるか分からないから。これは映画の中だけでなく、私たちの日常でも同じことが言える。だからこそ、登場人物の様々な言動に共感したり、ハッとさせられる。特にカホの「頭と心と体がバラバラ」っていう言葉に、分かる分かる~となった。

今回のハイライトは、真実のみを言うゲームのシーンかな。結構、場内クスクス笑ってた。どんどんキャラが崩壊したり、痛いとこ付かれると興奮して言い返したりのゲームのルール自体も守られなくなって……このシーンの トモヤ(初めて見た俳優だが満島真之介と藤木直人に似ててイケメンだった)を見ているのが特に面白かった。見てる分には面白いけど、自分がこれを仲の良い人とやったら、完全に仲が拗れる気がする。1時間経ったらノーサイドで一切忘れるというルールだけど、そんなの無理だし。

あれ?でも、さっきまでこれ私やってた、ゲームじゃないけど、と気付いた。色々話して、質問されて、見たくなかった自分の本音や自分の感情を見つけ、自分が自分らしく、楽しく生きれるように学んで来たばかり。信頼するカウンセラーさんとともに。

濱口監督の作品は、セラピー的な要素さえ含み、生きることそのものについて考えさせてくれるなと思うと、その才能の素晴らしさを月影千草の言葉を借りるなら「おそろしい子!」(伝わる人にしか伝わりません)となる。濱口監督week3日目も満ち足りた気分で終了。
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