むさじー

BIUTIFUL ビューティフルのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

BIUTIFUL ビューティフル(2010年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<生きる意味、魂の救済とは>

裏社会に生きる男が末期がんで余命いくばくもないことを告げられ、迫りくる死の恐怖に怯えながら、貧困にあえぐ不法移民の暮らしと、愛する子どもの今後を憂えて奮起する、その壮絶な生き様を描く。
こんな男の死に救いはあるのか? 
映画のエンディングははっきり物語っていない。
映画は「フクロウは死ぬとき毛玉を吐く」という言葉で始まり閉じるが、毛玉とは何か。
鳥の場合はぺリット(未消化物)の意味らしいから、人間なら「人生で犯しながら償っていない罪」のようなものか。
死に臨んで全て吐き出し浄化される、という意味かと勝手に解釈した。
霊能者でもある主人公の心の中には、亡き父が待つ“来世”があって、失敗続きの悲惨な人生だったが、恵まれない母子のために力を尽くし、望む形ではないにせよ子どもを他者に託し、散々な責苦を受けたのだから、魂は浄化されて安らかに旅立ち、救われたものと思いたい。
また、黒澤明『生きる』へのオマージュ的作品とあるが、死を前にして何を為すべきか葛藤し、生き直そうと努めた男の物語でもある。
謎に満ちていて理解を超えるところもあり、暗く重い気持ちにさせられるが、鑑賞後にあれこれ逡巡させる濃密な力を持った映画である。
むさじー

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