くりふ

落葉のくりふのレビュー・感想・評価

落葉(1966年製作の映画)
4.0
【ワインの樽には善も悪も詰められる】

特集上映『オタール・イオセリアーニ映画祭』にて。

オタ監督の、上映禁止を食らった長編デビュー作ですね。ユーモアとラブと、やっぱり居心地悪さが同居してました。精緻な映像は見事な求心力があり、眼は飽きませんでしたが。

物語の要はワイン醸造。8000年の歴史があり、ジョージア人にとって魂の礎でもあるらしい。それほど重要なら、当時のソ連が黙っているわけがなく、そら徹底管理するわけだ。

だから本作のヴィランは“計画経済”。舞台となるトビリシのワイン工場では、生産量のノルマ達成が最優先。酷い品質でも出荷する。造り手としてこれに従うか否か?が物語の縦糸。

計画経済では、計画通り生産すれば、極悪品質でも罪にはならないんですね。そう割り切る消費者の姿もチラと描かれており、ゾッとしました。

しかし、計画に反して造り手の正義を通しても、何となく凸凹が均されるカンジも描かれて…これが、居心地悪い。体制側をヴィランぽく見せまいとする、オタ監督の検閲対策でもあったのでしょうが…このキモチ悪さが本作の特徴で、オタ映画らしいとも思えます。

物語の横糸は、横に広がる人間模様。ラブ関係などはあるあるで、まあ微笑ましい。女優さんは美人だけど、ああいう態度が取れるのは、女性には社会的責任があまり、背負わされていないせいもあるのでは。だから自由奔放とか美人優位とか、言い切るにはちょっと…。

飲みニケーション大好きジョージア・ライフは、入りたいとは思わねど、興味深い。

主人公は、どこに行っても、好かれるがぴったりフィットはせず、嵌らない感じが面白い。チームの一員なのにはみ出している。これが最後に効いてくる。

そんな様相が、クローズアップを悪とするオタ監督らしい、ちょっと隙間ある人物への距離感で綴られる。私はこれが、時に退屈なのですが、詰めが豊かなのは間違いないですね。

それにしても冒頭、後に工場と対比される、長閑な、地中の樽を使う村でのワイン醸造…見惚れましたわ!19世紀末に行なわれていたような葡萄収穫の演出だそうですが、スプラというジョージア風宴会まで含め、一種のユートピアとして描かれていますね。

政府からすれば、国のプロモーションとして文句はないでしょう。が、その後がヒドイからより、“計画経済”のヴィランぶりが引き立っちゃうんですね…。そこが上映中止の理由か?

ところで、主人公の妹ちゃんらがめっちゃ可愛らしく!自分はロリではない筈なのに、ドキドキしてしまった…だだだってさ、あああの、パパパパンツってば!

<2023.3.26記>
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