いがみ合ってばかりいる二人が、
ある事件に協力して挑むうちに、
自然と友情が芽生えてくるというお話は、
『夜の大捜査線』(1967)を代表として珍しくない筋立てなので、
腕のない監督が演出するとどこか退屈になってしまうものだが、
本作は、当時絶頂期だったともいえるウォルター・ヒル監督なので、
最後までワクワクドキドキしながら一気に見せてくれる快作です。
囚人に野外で労役をさせているところに、
先住民が現れて看守の警官を射殺し、
囚人の一人を連れて脱走する。
このオープニングから切れ味鋭い展開で、
ポール・ニューマン主演の『暴力脱獄』(1967)を彷彿とさせる。
この逃げ出した囚人はギャンズという名の凶悪犯で、
遂には警官二人も殺してしまう。
殺された警官の同僚だった刑事ジャック(ニック・ノルティ)は、
昔のギャンズの仲間で、
現在服役中のレジー(エディー・マーフィー)を刑務所から引っ張り出し、捜査に協力させる。
このレジーが、
すこぶる抜け目のないやり手の男で、
捜査に協力しながらも、
なにか重要なことを隠しているようであり・・・
まず、荒っぽい刑事ジャックに扮したニック・ノルティーが、
嗄れ声でタフガイの魅力を見せる。
そんな強面のジャックも女性にはからきしというのが笑わせる。
そして相棒のレジーを演じたエディー・マーフィーが、
主人公ニック・ノルティーを喰ってしまうほどの演技。
彼が主演した『ビバリーヒルズ・コップ』(1984)のような、
速射砲のようなマシンガントークがないのがいい。
また、
『ナッティー・プロフェッサー』(1996)のような、
いかにもコメディアンですよという演技をしないのもいい。
敵役のギャンズが極悪非道で頭がよく、
とても強いのもいい。
アクション映画は、
敵が強ければ強いほど面白くなるのだ。
ウォルター・ヒル監督は、
坂の多い街を効果的に使ったカーアクションシーンに気合を見せる。
酒場での乱闘を派手にやったりするのも、
ヒル監督らしい。
地下鉄の構内で、
悪党同士の金の受け渡しの現場を抑えようとする二人の描写も、
混雑する人込みを利用してスリリング。
『ウォリアーズ』(1979)もそうだが、
地下鉄のサスペンスを撮らせたら天下一品だ。
編集も見事だな。
ラストの二人の別れのシーンも、
軽くひねっていて心地いい。
別れる二人を乗せた車をカメラが追い、
パンして街並みをとらえるともう夜明けになっている。
ちょっとだけセンチな気分になせてくれる演出もいいですね。
やっぱり、ウォルター・ヒル監督はいいなあ。